第46話 再生兵の群れ

 暫くすると島に近づく警戒駆逐艦の拡声器から、


 『コノフネハ『日本ノ船』デアル! 誰カ居ルカ。乗リ遅レタ者ハ居ナイカ! 三日後ニ、モウ一度エスペランサ岬ニ、迎二来ル。コノフ船ハ、日本ノ船デアル。三日後ニモウ一度エスペランサ岬ニ迎ニ来ル。安心シテ出テ来イ。兵ヲ救出ニ来ル! 三日後ニモウ一度、エスペランサ岬ニ、日本ノ船ガ迎ニ来ル!』


一木支隊三上上等兵が、拡声器からの「その声」を聞いた途端に叫ぶ。


 三上「 お~い! 迎えに来たぞ~! お~い。此処に居るぞ~! 出て来~い。皆んな出て来〜い・・・」


砂浜を走って追いかけて来る数十基の『再生兵』。

艦上の残兵全員が、号泣しながら砂浜に見える『再生兵の群れ』に叫んでいる。

必死に手を振る『再生兵の群れ』。

艦上の三上が指をさして水兵に叫ぶ。


 三上「おい! あそこに残兵達が追いかけて来る! おい! あれ、あれが見えるだろう。あそこだ。あそこに、・・・見えるだろう。あそこに居る残兵達が」

 水兵「? 何も見えないじゃないか。何処に居る? 誰も追いかけて来ないぞ」

三上「オマエにあれが見えんのか。まだあんなに残ってるじゃないか」


水兵が目を凝らし、双眼鏡を覗く。


 水兵「・・・あ! あれは? あれは・・・」

 三上「見えるだろう。ほら、あそこに! あそこにも! おい・・・お~い・・・川村~、成田~、柴田~、平山~、工藤、野村〜・・・」


三上が手摺(テスリ)を拳(コブシ)で叩き、号泣しながら必死に叫ぶ。


 三上「お~~い。迎えに来るからな~、必ず・・・必ず来るぞ~!」


三上は汚れた手拭いで泪を拭いて、あの時上陸した『あの砂浜』を見詰めている。

                         つづく

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