第37話 一万もの生存兵

 椰子林を敵機に見つからないように急ぐ木原以下六人。


 木原「森 、島にはどの位の残兵が居るんだ」 

 森 「ハイ! 一木の兵隊が言うには一万以上は居るだろうと言ってました」


全員が驚く。


 木原「いッ、イチマン! そんなに居るのか?」

 河野「誰とも会いませんねえ。・・・いったい何処に隠れて居るんでしょう」

 森 「山の方に居るらしいです」

 木原「山? オーテン(アウステン)山か? あそこは敵機の爆撃でハチの巣だろう」

 森 「北側の川沿、マタ川(マタニカウ川)に陣を構えてると言ってました」

 関元「何を喰ってるんだろう」

 森 「病人だらけで弾も米も薬も少なく、まさに生き地獄だと言ってました」


木原が心配そうに、


 木原「岬まで来れるんだろうな」


森は黙り込む。

編隊を組んだ米軍戦闘機(F4Uコルセア)が戻って来る。

関元は悔しそうに空を見上げて、


 関元「クソ~。ラバウルのゼロ戦はどうした。百機は在ると言ってたじゃねえか」

 木原「何処かで戦っているんだろう。俺達の為に」

 福原「少尉。ここから先は断崖ですよ。ジャングルに迂回しましょう」

 関元「ジャングルか。背嚢が重いのう」


木原は関元の背嚢を見て、


 木原「キサマは詰め過ぎだ」

 関元「腹が減っては戦(イクサ)が出来ませんからねえ」

 森 「腹がイッパイでも戦が出来ませんよ」


六名が笑う。

                         つづく

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