第31話 狙われる日本兵

 上陸四ヶ月目の早朝。

雨である。

細い『丸山道』のあちこちに、雨に濡れてボロボロの軍衣を纏った「白骨兵」が座っている。

鳥の鳴き声が雨のジャングルに響き渡る。

 寝ている木村一等兵の顔に蠅が三匹とまっている。

木原少尉が起き上がって周囲を見る。


 木原「大宮は何処に行った?」


関元は寝ぼけて、


 関元「・・・糞(クソ)でもタレに行ったんでしょう」


突然、ジャングルに『叫び声』が響く。

関元、福原、木村、森が飛び起きる


 木原「何だ!」

 福原「ヒトの声ですね・・・」

 関元「あッ! 大宮だ」


河野が焦って、


 河野「やられたか」

 木原「おい、行こう!」


木原達が銃を持って洞穴兵舎から飛び出て行く。

歩哨(見張り)の河野が木陰に隠れカービン銃を構えて居る。


 木原「どうした!」

 河野「大宮の声です」

 木原「関元、左に行け! 福原、右! 木村、道! 河野は此処に居ろ。俺と森は下の川を見て来る。急げ」


暫くして五人が戻って来る。


 木原「居たか」

 木村「居ません」

 木原「何処に行ったんだろう」

 関元「捕まったか?」

 木原「おい、直ぐに此処を引き払おう」


木原以下六人の残兵達が急いで洞穴兵舎に入る。

荷物を纏め、移動の準備をしている六人。

そこに大宮が顔面血だらけで洞穴営舎に戻って来る。

六人が驚いて大宮を見る。


 木原「どうした! その顔は」

 大宮「住民にやられました」

 木原「ジュウミンに? どこを」

 大宮「頭です・・・」


大宮の頭から血が吹き出している。


 関元「まだこの辺に居るかもしれません」

 福原「アメ功にタレ込まれたら大ゴトですよ」

 木原「とにかく傷の手当てをして、直ぐ此処を出よう。森、救急箱を持って来い」

 森「はい」


森が大宮の頭に包帯を巻いている。

全員が荷物をまとめ終わる。

全員の軍装を見る木原。


 木原「襟の階級章は焚火で焼いてしまえ。狙撃されるぞ。もし、俘虜に成っても一兵卒で通せ」

 六人「ハイ」

                         つづく

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