第26話 コカコーラの効き目
木原少尉の縛られている樹の周りに、ヘトヘトの関元曹長達が集まって来る。
関元「少尉、成功しましたよ」
木原は一点を見詰めて動かない。
関元「おい、福原、水はねえか」
福原「ミズ? そんな物は無かったです」
河野「あッ、ビールみたいな物をカッパラって来ました」
関元「酒か? ・・・まあ良い。元気が出るだろう。出せ」
河野が麻袋から「こげ茶色の瓶」を取り出す。
福原は瓶を見詰めて、
福原「アメ功はそんな色のビールを飲んでるのか?」
河野は戦利品の「十徳ナイフ」の中から栓抜きを開き、栓を開ける。
溢れた泡を舐める河野。
河野「う、何だこれは。甘いような・・・、薬か?」
関元「どれ、俺に舐めさせろ」
渡された瓶の周りを舐める関元。
関元「うん。これは・・・生姜(ショウガ)サイダーだ」
福原「甘いんですか?」
関元はゆっくり、味わう様に瓶の『水?』を飲む。
関元「・・・う~ん、甘いと言うか。美味(ウマ)いな」
旨そうに飲む関元をみて福原が、
福原「私にも一口毒味させ下さいよ」
関元「おお、飲め」
福原は喉を鳴らせ瓶の中身を飲む。
河野と大宮が恨めしそうに福原を見ている。
二人「・・・旨いですか?」
福原「旨い。これは気付け薬だ。少尉に飲まそう。ハハハハ」
大宮「俺も飲みてえなあ」
福原は大宮を見て、
福原「待てや。焦るな。まず、木原少尉殿だ」
福原は関元に瓶を渡す。
福原「・・・こぼさないで下さいよ」
関元「分かっとる」
関元が虚ろな眼の木原に『奇妙な色の炭酸水』を飲ませる。
木原少尉は咳き込み、鼻から泡を出す。
木原「ブフ、ゴホゴホゴホ。・・・何をするか!」
関元「お、気が付いた。さすがアメ功の気付けだ」
木原は関元の持つ瓶を見て、
木原「・・・? コカコーラじゃないか」
関元「何スか? それは」
木原「アメリカのサイダーだ」
関元「サイダー・・・。ほう。コカーラねえ・・・」
木原は関元達四人を見て、
木原「・・・成功したようだな」
関元「 何だ、木原少尉、俺達の突撃を知ってたんですか」
木原「うん?・・・うん。佐々木准尉が来て教えてくれた」
関元「佐々木准尉? ああ、ホトケ様ですか。実は俺達の所にも早坂中隊長と佐々木准尉が出て来てくれましてね。上手(ウマ)く段取ってくれたんですよ」
木原は河野の傍に置いてある麻袋を見て、
木原「それか」
大宮が笑顔で、
大宮「はい。当分、腹との戦いは落ち着きそうです」
骨と皮の木原が笑う。
木原「ハハハ、良くやった。オマエ等に勲章をやろう」
関元「クンショウ? 要りませんよ、そんな物。・・・木原少尉、頭の方はどうですか」
木原「アタマ? 何にか遭(ア)ったのか」
四人が顔を見合わせる。
関元は感心した様に、
関元「やっぱりコカーラのせいだ」
福原「効くねえ。木村にも飲ませてやろう」
木原「そうだな。おい、此処(ココ)で少し腹ごしらえしょう」
関元「おお。そうだ! 早速、缶詰めを開けましょう」
大宮「待ってました」
河野「ヨッシャ!」
河野が麻袋から缶詰めを取り出し、一つ一つ缶切りで開けて行く。
眼が点の残存兵達。
つづく
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