第24話 木原少尉の発狂

 木原少尉が『丸山道』の一点を見詰めて動かない。

突然、奇妙な笑い声を発する木原。


 木原「フフフ・・・ハハハ・・・地獄だ・・・」

 関元「?? 大丈夫ですか木原少尉。気をしっかり持って下さいよ」


木原の眼付きが異常である。

突然、


 木原「オイ、突撃するぞ!」


立ち上がり、一人で『丸山道』を歩いて行く。


 関元「あ、木原さん! 待って下さい! 木原少尉・・・」


急いで後を追う関元。

それを見て福原達三名が二人を追う。

道の先に飛行場が見えて来る。

木原が突然、独り言を良いながら走り始める。


 木原「突撃だ・・・突撃するぞ・・・トツゲキ、トツゲキ・・・」


木原の血走った眼。

関元が必死に木原を追う。


 関元「少尉! だめですよ。敵に見つかります。木原さん! オイ、皆! 少尉を捕まえろ」


関元、福原、河野、大宮が木原を取り押さえる。


 関元「どうしたんですか。しっかりして下さいよ」

 木原「キサマ等、何をする! 着剣しろ。俺に続け!」


木原は狂っている。

関元は焦って、


 関元「オイ! 皆。少尉をその樹に縛れ」

 森「縛れって言われても、縛る物が無いです」

 福原「あ、そこに葛(カズラ)の蔓(ツル)が有る」


急いで銃剣で蔓を切る福原。


 関元「ヨシ。それで縛っておこう」


四名は木原を樹に縛りつける。


 関元「木原さん、申し訳ない。此処に待機してて下さい」


木原が関元に向かって大声で、


 木原「キサマ、 軍規違反だぞ! 軍法会議だ」


木原の血走った目。


 関元「静かにして下さいよ。違反でも何でも構いません。とにかく少しの間、我慢して下さい」


木原は急に力が抜けた様に黙り込む。


 関元「よし。皆、行くぞ!」

 続く兵士達「はい」


木原は虚ろな表情で地面に向かって、


 木原「関元、・・・俺の家・・・頼むぞ」


関元は驚いて振り向く。

木原の顔を見詰めて、


 関元「木原さん・・・。しっかりして下さいよ。皆で一緒に帰るんですから」


関元の眼から涙が溢れ出る。

                         つづく

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