第11話 再生兵の突撃

 眼下に日本軍が造った 「ルンガ飛行場」 が広がる。

早坂中隊長と木原少尉、佐々木再生兵、野村伍長達が小高い丘の上から飛行場を見ている。

・・・ゼロ戦の残骸が見える。

早坂が『双眼鏡』で敵の位置を確認する。

早坂は木原に双眼鏡を渡す。

木原も双眼鏡で周囲を確認、佐々木再生兵に渡す。

最後にもう一度、野村が双眼鏡で敵の配置を確認する。

飛行場には米軍が急仮設した、数本の「鉄板滑走路」が広がっている。

四方(東・西・南、北)に米軍の「見張り塔」が建っている。

塹壕が空港を囲む。

塹壕には銃火器が設置されている。

滑走路の隅に米軍戦闘機(F4Uコルセア)が八機、整然と並んでいる。

営舎の右左には各一両、計二両の戦車(M4)が配置されている。

破壊された滑走路の窪みの中で作業をしている米兵達。

上半身は裸である。

早坂は腕時計を見て、


 早坂「十六時二五分か・・・。もう少し暗くなるまで待とう。木原! 兵を配置に着かせてくれ」

 木原「はい!」


木原が下がって行く。

佐々木再生兵が、


 佐々木再生兵「野村、ちょっと俺と一緒に来てくれ」

 野村「はい」


早坂は二名を見て、


 早坂「おい、何処に行く!」

 佐々木再生兵「あの戦車を分捕れるかどうか見て来ます」


早坂は驚いて、


 早坂「センシャを!?・・・そうだなあ。気を付けろよ。無理はするな」

 佐々木再生兵「大丈夫です。死にませんから」

 早坂「なにッ!」


早坂はまた佐々木再生兵の全身を見る。


 佐々木再生兵「あ、兵を一人連れて行きます」

 早坂「それが良い。大宮を連れて行け」

 佐々木再生兵「はい!」


佐々木再生兵は野村を見て、


 佐々木再生兵「野村、大宮を此処に呼んで来てくれ」

 野村「はい」


野村が急いで大宮を呼びに行く。

暫くして野村が大宮を連れて来る。

佐々木再生兵が大宮を見て、


 佐々木再生兵「これからあそこの戦車を分捕りに行く。いいか、無理するな。十分、気を付けろよ」


大宮は驚いて、


 大宮「えッ! セ、センシャを? ・・・はい!」


早坂は三名を見詰めている。


 佐々木再生兵「ヨシッ、行くぞ!」


佐々木再生兵と野村、大宮が丘を駆け降りて行く。


 三名が椰子の木陰に身を潜めている。

米兵の話し声が聞こえる。

交代の米兵は戦車の脇を素通りして、窪みの奥の重機銃に配置する。

佐々木再生兵が戦車(M4)のハッチにめがけて石を投げる。

反応が無い。

戦車(M4)の中には米兵が居ない様である。


 佐々木再生兵「おい、野村。車の運転は出来るか」

 野村「勿論です。内地ではトラックの運転手をやってましたから」

 佐々木再生兵「そうか。じゃ、戦車の運転はオマエに任せる」


野村は驚いて、


 野村「ええッ! センシャの運転!?」

 佐々木再生兵「外車だと思えば簡単だろう」

 野村「・・・まあ」

 佐々木再生兵「大宮、これから攻撃をかけると中隊長に知らせて来い」

 大宮「はいッ!」


大宮が椰子林の中を全速で駆け戻る。


 大宮が息を切らせて早坂の前で報告している。

早坂は驚き、


 早坂「何ッ! たった二人でか?」

 大宮「はい」

 早坂「・・・。木原! 全員に知らせろ。攻撃の準備だ」

 木原「ハイ!」

 早坂「あの世に行くのに、時間を選んでる暇はない」

                         つづく

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