第10話 増える早坂中隊

 そこに川口支隊の『将校』が早坂中隊長の前に現れ挙手の敬礼をする。


 早坂「おまえは?」


将校は、


 将校「 『川口支隊・相澤中隊、木原猛雄』です」


早坂は襟章を見て、


 早坂「おお、川口支隊の少尉か。大変だったのう」

 木原「はい。残念ながら、中隊長もやられました」

 早坂「そうか・・・。東海岸に上陸したのか」

 木原「はい!」


早坂は相澤中隊の残兵達を見て、


 早坂「・・・これだけか」

 木原「はい! 私を入れて六名です」

 早坂「六名? 中隊が六名?・・・全滅だな。我が中隊も合流部隊を入れて十三名だ」


早坂は振り向いて中隊の兵士達を見る。


 早坂「?」


中隊の兵士の数が減ってない。


 早坂「?、菅井! キサマ、やられたんじゃないのか」

 菅井再生兵「やられました。でも・・・生き返りました」


早坂は不気味な表情で菅井再生兵の全身を見る。


 早坂「ナンダ? ソレは・・・」


早坂と菅井再生兵の会話を聞いて振り向く木原少尉。


 木原「どうしたのですか?」

 早坂「分からん。中隊の兵士が減らないのだ」

 木原「兵士が減らない?」

 早坂「そうだ。撃たれても死なない。いや、生き返るらしい」

 木原「イキカエル?・・・」


早坂は菅井AIを見る。

菅井再生兵も早坂を見て、


 菅井再生兵「分りません。 ただ・・・」

 早坂「ただ何だ」

 菅井再生兵「死んだ事は事実です」

 早坂「そんなバカな・・・」


信じられない顔で聞いている木原少尉。

早坂は集まった残兵達の中の高橋再生兵の「手首」を見る。


 早坂「高橋! キサマはさっき米兵に手を撃たれたな」

 高橋再生兵「はい!」

 早坂「ハイ? ・・・怪我をして無いじゃないか」


高橋再生兵は自分の手首を見る。


 高橋再生兵「? ・・・あッ!?」

 早坂「あ? その手はなんだ!」

 高橋再生兵「分りません。ジブンは、・・・自分は・・・夢中で」

 早坂「ワカリマセンだと? ・・・」


全く納得行かない早坂。

魂達が早坂中隊の負傷兵に次々に入れ替わって行くのである。

 早坂は集まった相澤中隊の六名の残兵達を見回し、


 早坂「・・・ヨシ、相沢中隊木原少尉以下六名を早坂中隊に再編する。全員、目的完遂まで死しても百鬼と成り? ・・・朝敵を撃つ。良いな!」

 兵士達「はい!」


士気が上がる早坂中隊。


 早坂「佐々木准尉!」

 佐々木再生兵「はい!」

 早坂「オマエは木原少尉を補佐しろ」

 佐々木再生兵「はい!」


佐々木再生兵が木原少尉の前に一歩進み出て、挙手の敬礼をする。


 佐々木再生兵「佐々木は木原少尉を補佐させて頂きます」


木原少尉も軍装の汚れてない『佐々木再生兵』を見て、怪訝な顔で、


 木原「?・・・、ヨシ!」


残兵達二十二名が踵(キビス)を返し、早坂中隊長と木原少尉に挙手の敬礼をする。


 第12師団久留米歩兵第48連隊橋本部隊・相澤中隊

  ○木原猛雄(陸軍少尉)

   西山 徹(陸軍軍曹)

   市村金太(陸軍上等兵)

   山本権助(陸軍上等兵)

   木村武治(陸軍一等兵)

   野々宮博(陸軍一等兵)


早坂は佐々木再生兵の身体(カラダ)を納得ができない視線で見詰めている。

                         つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る