第9話 川口支隊
野村伍長が小高い丘の上からジャングルの先を見ている。
野村「あ、中隊長! 飛行場です。飛行場が見えます」
早坂と佐々木再生兵は草むらで顔を見合わせる。
早坂「在った?」
佐々木再生兵「在った!?」
痩せた兵士達があちこちから頭を出す。
森 「在ったか」
浅田「在った!」
徐々に高揚して来る兵士達。
野村「オレ達の造った飛行場だ!」
泣いている兵士達。
福原「やっと着いた・・・」
早坂「よ~し! 川口支隊の残兵が居るかもしれない。援護に行くぞ」
兵士達「はいッ!」
士気が揚がる兵士達。
丘の向こうのジャングルから数発の銃声が聞こえる。
早坂「お? あれは38銃の音だ。先行隊が居るぞ!」
佐々木再生兵「心強いですね。行きましょう」
早坂は傍に付く佐々木再生兵の身体(カラダ)を再度、舐める様に見て、
早坂「キサマ、本当に生きてるのか?」
佐々木再生兵「そんな事はどうでも良いです。とにかくルンガ(空港)を奪還する事です。先に行きます」
納得行かない早坂。
早坂「うん?・・・うん・・・」
佐々木再生兵が走って丘を下って行く。
早坂は気迫みなぎるササキを呆気に取られて見ている。
早坂「ヨ~シ!」
早坂が右手を高々と上げ、気合の入った声で、
早坂「前進~ッ!」
兵士達十八名(内・ 四基が再生兵)が早坂の号礼一下、丘を駆け下りて行く。
痩せた兵士達が泥まみれの軍装で早坂の後に続く。
聞きなれた友軍の銃声音が迫って来る。
早坂「あそこだ! 散開、散開! 野村、右。右に五! 早く行け。佐々木(再)ッ! 左五! 行け、行け・・・」
早坂は必死に手と指で合図する。
佐々木再生兵が右手を上げる。
五人の兵士に、手指で命令を指示するササキ。
野村達四名が右を一目散に走って行く。
最後に菅井が「銃剣」を振り上げて走って行く。
早坂「菅井! 銃を奪え。銃剣では戦えぬ!」
菅井は振り返り、
菅井「はいッ!」
岩陰では先行部隊が猛然と軽機銃を撃っている。
十メートルほど先に「火炎放射器」のボンベを背負った米兵が出て来る。
機銃兵を狙って火炎放射器の炎が飛ぶ。
火炎に包まれた二名の日本兵。
断末魔で逃げ惑う日本兵に向けて、米兵が容赦なくカービン銃を撃つ。
傍に居た日本兵が軽機銃の射撃を代わる。
早坂は手指で兵士達に合図している。
早坂「背後に回れ」
前進した関元と斎藤が米兵達の背後に手りゅう弾を投げつける。
米兵は驚いて、岩陰から一目散に逃げる。
狙い撃つ先行隊の軽機銃。
米兵の一人が何かを叫んで倒れ込む。
必死に地を這い樹の影へ隠れる米兵。
菅井は樹の影の米兵に飛びかかる。
米兵から銃と弾を奪う菅井。
菅井は急いで早坂の近くに来る。
逃げた米兵が岩陰から早坂を「狙撃」する。
銃弾が早坂の顔を掠め、近くに居た菅井の顔面に当たる。
菅井「う!」
菅井の呻く声。
早坂はその声に振り向く。
菅井の顔面から血が吹き出す。
早坂が叫ぶ。
早坂「菅井ッ! スガイ~・・・」
早坂が転がりながら菅井に近づく。
必死に菅井を呼ぶ早坂。
早坂「スガイ~!・・・ダメだ・・・クッソ~!」
早坂は菅井が奪った米軍の自動小銃を取り、猛然と突進して行く。
菅井の死体に近づく『鉄帽の魂』。
魂は菅井の顔に手を触れる。
菅井の目が開く。
傍に「殻の鉄帽」が置いてある。
兵士達は敵の背後に回る。
早坂の絶叫の声。
早坂「ブッ殺せ~!」
背後の銃が一斉に火を拭く。
米兵達が戸惑い機銃を回す。
側面の浅田が手りゅう弾を投げる。
爆発音と同時に他の兵士達が猛突撃を駆ける。
同時に前方から先行部隊(川口支隊)の兵士達が突撃して来る。
錯乱した米兵達。
高橋が銃剣一つで飛びかかる。
高橋の右腕に米兵の短銃が火を拭く。
銃剣を持った高橋の手首が飛んで行く。
手首を失くした高橋は断末魔で地にもがいている。
すると一基の『鉄帽の魂』が近づく。
高橋の手首に触れる魂。
『手は再生』している。
高橋の手の傍には「殻の鉄帽」が。
短い時間の戦闘が終わる。
早坂部隊と先行の川口支隊の兵士達が、倒れている米兵達の周りに集まり武器を奪う。
早坂が兵士達に集合を掛ける。
早坂「全員、集まれ~!」
兵士達が早坂の周りに集って来る。
つづく
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