前回との相違点
ダイニングから自分の部屋へ戻る。
みんなには頭が痛いので少し休む。様子を見て学校には遅刻して行くか、休もうと思うと伝えた。
テストが来週に迫っているから、無理をしてさらに体調を崩すのはよくないだろうと、みな納得してくれた。
ベッドで仰向けになって考える。突拍子もない事でもいい。
どんな事でも可能性があれば考える意味がある。
何故なら、俺はある日突然知らない幼馴染が出現するという非日常を味わっているからだ。
俺は元々、
神様のイタズラなのか、超自然的現象が起きたのか、今俺は
そしてこの世界において、妹の
俺はこの目で胸に突き立てられた包丁を見たし、何度も何度もグサグサと伊千香が羽那子を刺していたのを目の前で見ている。
あれは確実に死んでいるはずだ。
少なくとも、次の日の朝にいつも通りの歩き回れるはずがない。
自分に包丁を何度も突き刺した加害者と笑い合いながら朝食をとるはずがない。
羽那子は一度死に、そして世界の時間が巻き戻り、起点となる俺がこの世界へ転移した朝に戻ったのではないだろうか。
その仮説を裏付ける証拠として、羽那子の家に泊まっていたはずの
何故ならば、時間が巻き戻っているから。
本来であればスマホの時計を確認すれば時間が戻っているかどうかなんて分かるだろう。
父さんが読んでいる新聞の日付をチェックしたり、バカみたいに母さんに今日は何月何日だと問い正してみたりすればいい。
でも、俺は突然現れた幼馴染という訳の分からないもののせいで、この世界自体を信用出来ないと今さら感じている。
俺か記憶している日付と、この世界の日付がイコールであるという確信はどうしても持てない。
俺の記憶にない写真、記憶にないエピソードを語る身内。
何を信じればいいのか、何ならば信じられるのか。分からない。
そしてもう一つ。
時間を繰り返しているのは俺だけではない。
繰り返していると知覚しているのは、俺と羽那子だけだ。
羽那子にどれだけの自覚があるのかはまだ分からないが、前回伝えた俺の好みを覚えていた。
コーヒーはブラックを好み、目玉焼きには塩コショウをかける。
好みではないが、朝のルーティーンである寝間着のまま洗面所に行き、朝食後に制服に着替えるという流れも把握していたように思える。
……いや、ちょっと待て。逆だ。
何で幼馴染だというのに、前回はそれくらいの事を知らなかったんだ?
毎朝俺が繰り返している行動だ。把握していない方がおかしかったのだ。
そもそも羽那子も、俺という幼馴染が突然現れたという可能性はないか?
「いっくーん」
羽那子の声。階段を上る足音。ノックなく開けられる扉。
「おっ、ちゃんと寝てるんだね。
あたし達もう学校行くけど、無理して来る必要ないからね?」
「分かった。今日は大人しくしてるよ。
でも退屈だからな、学校で何か変わった事があれば連絡してきてくれよ」
「いっくんがそんな事言うなんて珍しいね」
ふふふっ、と笑う羽那子。
俺の仮説が正しいのならば、登校してすぐに美紀が転校生として
転校生など滅多に現れない。
羽那子から
じゃあね、と背中を向けて、羽那子は部屋を出て行った。
あの背中は、今日起こる事を知っているのか。それとも……。
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