恋人からの電話
時間的に今頃、教室では
羽那子も授業中にわざわざ連絡をして来るとは思えない。
だからといってこちらから変わった事があっただろうと連絡するのは不自然だ。
羽那子の正体、この世界の主人公として時間を繰り返しているという自覚があるかどうかで、俺は羽那子への対応を変えなくてはならない。
もし自覚があるのなら、あいつの思惑一つで俺の存在が揺らぐ。
自覚がないのなら、この世界がどうなるのか想像もつかない。
いや、この世界の主人公だったとして、この世界に及ぼす影響力が大きいとは限らない。
願うだけで世界の常識を曲げられるかどうかなんて俺には分からないし、そもそも常識を曲げられた後であれば俺にその事が知覚出来るかどうかも分からないのだ。
曲げられた後であれば、それこそが常識になるのだから。
……この世界の主人公って何だよ。俺は妄想オタクか?
冷静に考えれば笑えない黒歴史の最中みたいな思考だけれど、実際に自分の身に異変が起きている以上、可能性一つ一つに対して絶対にそうではないと言い切れないでいる。
ダメだな、いくら考えてもこの状況下で自分がどのような行動を取ればいいのか分からない。
本当に頭が痛くなってきた。
様子を見に来てくれた母さんにやっぱり学校を休む事を伝え、目を閉じる。
何か連絡が来たらすぐに気付くように、枕元にスマホを置く。
ふぅ……、そもそも俺が何かする必要あるか?
俺は物語の主人公じゃないんだ。世界をどうにかする為に何かしろって神様に言われた訳じゃない。
今の俺の気持ちとして、羽那子と付き合いたい訳ではないし、美紀と付き合いたい訳でもない。
だからと言って他に意中の相手がいるでもない。
そう考えると、少しだけ心が軽くなって来た。
そうだ、俺は特に何をしなければならない訳ではないんだ。
てぃんとんたんとんたぃんとんたんとん♪
何だ!?
あぁ……、寝てたのか。
スマホが鳴っている。これは、着信音か?
睡眠状態から強制的に覚醒させられ、頭がガンガンと響く。
何だ? うるさいっての。
切ってしまいたいが、誰からか確認だけでもしておこう。
ん?
羽那子ではなく
気になって、着信ボタンをフリックする。
「もしもし……」
『もしもし
……テンションが違う。いや、そもそも林さんは俺の名前を呼び捨てにはしない。
「あぁ、大丈夫だ。念の為に休んだだけだから」
『そうなの? 学校終わったらお見舞いに行くけど何かいる?
お見舞い? それは、みんなでという意味だろうか。民人も一緒に?
それと母さんの事を名前で呼んでいる。羽那子も母さんの事を伊千子ちゃんと親しげに呼んでいたな。
「本当に大丈夫だから。明日は絶対に行くから。お見舞いなんて大袈裟だ。
それより、学校で何か変わった事はなかった?」
今お見舞いに来られても、対応に困る。
どのように立ち振る舞えば良いのか、ある程度情報を得ておきたい。
『大切な恋人が体調不良で休んだ以上の出来事なんてないわ!』
大切な、恋人……?
『本当は今すぐにでも様子を見に行きたいところだけど、まだ昼休みで授業も残ってるから我慢する。
伊千郎の為にノート取っておくからね。で、授業終わったらすぐに向かうわ。
伊千郎の事、
……知らない恋人ってか?
この世界は俺をどれだけ振り回すつもりだ!!?
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