第3話 君は、友達?
「勝負だあ!」
「え、何、なぎさ。純哉は? 置いてきたのか?」
「問答無用! 付いてきなさい!」
俺の質問には答えずに、どんどん先にいく、こいつ。下駄箱にはちゃんと寄るあたりは、なぎさらしいけどな。
まあ、いいか。俺も話したいこと、あるし。
「さあ、尋常に勝負!」
これ……近所の公園のジャングルジム。
「行くわよ!」
荷物を端に寄せて、なぎさは仁王立ち。
「……て、なぎさ、スカート!」
「スパッツ履いてる!」
言いながら、するすると登りだす。
あいつ……相変わらず、速い。
かっこいい登り方、って、つい、見とれちまうのも。
ジャングルジムの、鉄くさい匂いも。
……懐かしいな。
うお、やべえ。
101敗目になっちまう。
これじゃあ、本当に競争、じゃなくて対決、だな。
対決。今なら、勝てるかな。
荷物を放り出して、俺も、登り始める。
「待てえ!」
あの頃よりも、長い、俺の手、足。
幼稚園の、あの時のジャングルジムじゃあないけれど、それでもやっぱり、楽しい。
「……勝ち!」
負けた。競争じゃなくて、ジャングルジム対決。
本気のなぎさには、まだ、勝てないかあ。
「負けた! やっぱり、なぎさはすげえな」
「何よ。お世辞? 違う高校行こうとしてるくせに」
「え? それはお前だろ? 女子高なんて行くなよ! 追っかけらんねえから! ジャングルジムじゃねえんだぞ?」
そうだ、話! 対決が楽しくて、忘れかけてた!
……あれ、何だか様子がおかしくねえか?
「え、泰斗が男子校に行くんじゃ……だって、純哉が」
「俺も、純哉から……あ」
「もしかして」
「ああ、多分」
そうだ。俺のこと、純哉のこと。
俺達二人がどんななのか。
見た目は、多分、見たまま、なんだろう。
背が高いから?
俺は今年、純哉は小学校でなぎさの背を追い越した。だからなのか、中身もよく知らないのに、紹介して、とかなぎさに言ってくる女子達が、少し、いや、かなり? 多くなった。
困ってたもんな、なぎさ。
逆に、俺達になぎさを紹介しろとかぬかす奴もいるが「俺か純哉に成績で勝てたらな」って言ってるから大丈夫だ。
俺達に勝てるのは、なぎさだけだからな。
かっこいい、俺達の友達。
「……二人でちゃんと、話をしろよ、ってことだよな」
「うん。最近、私と純哉ばっかり、話してるもんね。……ごめんね、泰斗」
「いや、俺も悪かったよ。もしも、もしもだぞ? お前が俺達と違う高校希望、とかなら、絶対に三人一緒の時に話してくれるもんな」
「そうだね。泰斗も、だよね」
「ああ。純哉も、な」
「純哉に、ありがとうって言おうね」
「ああ。二人でお礼、買いに行くか。英語と数学の、参考書とか。……どうだ?」
「いいね……って、二人で?」
「一緒に行ったら、あいつ、遠慮するだろ。レシート頂戴、って言うぞ、きっと」
「そうか、そうだね。じゃあ、二人で、だね」
……あれ?
なぎさ、かわいいな。
あれ、今、俺、何を考えた?
いや、こいつがかっこいいのは、もちろん知ってる。
かわいい、のも、きっと、そうなんだろうな。
でも、変だな……。
まあ、いいか。
俺達は、ライバル。
そして、もちろん。
大事な友達、だもんな!
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