第2話 君は、友達。

「ねえ、幼稚園からの幼なじみなんでしょ?」

 ……また、なの? 


 正直、かんべんしてほしいんだけどな。


「かっこいいよね、泰斗たいと君。背も高いし、足も速くて、数学、学年1位!」


 わざわざ言われなくたって、あいつがかっこいいってことなんか、が一番よく知ってるわよ。


 背は、幼稚園の頃からずっと、私よりも低かった。

 今年になって、あっという間に抜かされたけど。


 足だって、私の方が、速かった。今は、かなわないけど。


 でも、ジャングルジム登り対決は、私の100勝10敗だった。

 泰斗は競争、って言うけど、私の中では競争、よりも対決、のイメージなんだよね。


 数学は……だけど、英語は、私が1位だよ。あと、社会も、たまには。


「……なぎさから紹介してもらおうとか、考えない方がいいよ。泰斗、そういうの、嫌いだから。何しろ、なぎさはライバルだからね、あいつの」


「あ、純哉じゅんや君! うん、そうだよね、分かった! ごめんね!」


 何が、ごめんね、なの?


 泰斗のことが好きなんじゃなかったの? あの子。


 まさか、純哉のことも好き、とかなの?


「確かに、純哉はかわいくてかっこいいけどさ」

「どうしたの、なぎさ」


 ともだちになろう、って泰斗に言ったのは、私。


 らいばる、も嬉しかった。


 泰斗の幼なじみの純哉とも、こうやって、仲良くなれたし。


 幼なじみ、三人。皆、仲良し。


 泰斗とだけ、中2の今年はクラスが離れたけど、だいたい三人一緒に登下校。小学校から、ずっと。


 だけど、中学生になった今は。


 かっこいい泰斗と、かわいくてかっこいい純哉。


 私は、何? そう、思うことがある。


 勉強も運動もできる方。でも、勉強はともかく、運動は、女子の中では、だ。

 背が高い、かっこいい、って言われても、やっぱり、女子にしては、で。


「悔しい! ジャングルジム登り、私の方が早かったのに!」

「そうだね、幼稚園の頃は僕、身体が丈夫じゃなかったから。二人がすごく、かっこよく見えたよ」

 ああ、純哉は本当に優しいね。


「純哉、アリの巣探し、いつも一番だったじゃん」

「それを褒めてくれるの、なぎさと泰斗だけだよ」 


「そう? さっきの子も、泰斗のこと紹介してほしかったみたいだったのに。純哉が来たら顔、赤くしてたよ?」 

 純哉の素敵なところは顔だけじゃないけどね。とっても、優しいの。


「気のせいじゃない? それより、聞いた?泰斗の志望校」


「え。三人で同じ所、共学! でしょ? 難関校だから、皆で首位争い。頑張らなきゃね」


「うん、だけどね……」


「何それ! 信じられない! ごめん、今日は先に帰るね! 泰斗、まだ教室にいるよね?」

「うん、そうしなよ。泰斗によろしく」


 ……何よ、何よ!


 ライバルに、友達に。……私に! 


 秘密だなんて!


 許さないんだからね!




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