五 見つかった友人

 次に気がつくと、いつの間にか朝になっていた……俺はあのまま寝落ちしたようである。


 昨夜の出来事はきっと夢だったに違いない……そう信じたかったが、普段は枕元に置いてあるスマホが、投げ出した床の上に転がっていたのでそう信じきることもできない。


 そうして悶々とした気分のまま学校へ行くと、やはりBは来ておらず、いまだ家にも帰っていないらしい……。


 自分自身でも半信半疑だったので詳しくは話さなかったが、俺はAとCにも何か変なことはなかったかと訊いてみた。


 だが、二人はきょとんとした顔で「特になにも…」と言っており、その様子からして嘘はついていないみたいである。


 それから一週間、相変わらずBの行方はまるでつかめず、いい加減、俺達もマジに心配し始めた頃になって、警察が俺達のもとへもやって来た。


 こうなっては秘密にしてもいられないだろうし、俺達はあの夜、Bと一緒に廃神社へ行ったこともその事情聴取で話した。


 すると、事態は一変する……警察が廃神社へ行ってみたところ、社殿の中でBの遺体が見つかったのだ。バイクもやはりあの石段の下に停めてあったらしい……。


 最初は俺達による殺害や集団暴行での過失致死も疑われたが、司法解剖の結果、死因は心臓麻痺だったのですぐにその嫌疑は晴れた。


 でも、そうなるとますます謎は深まるばかりだ……なぜ、Bはあんなところで死んでいたのか? その謎を解く糸口すら掴めず、警察も頭を抱えている。


 尋問の際に警察から聞いた話によると、死の直前、何か恐ろしいものでも見たかのようにBの顔はひどく引き攣っていたらしい。


 ちなみに扉は固く閉ざされてなどおらず、いとも簡単に開けることができたみたいである。


 あの時、扉の向こうでBの呟いていた


〝え? なんで? ひぃっ…〟


 という言葉が不意に脳裏を過ぎる……。


 常識的に考えれば、俺達とコンビニで別れた後、Bは一人で廃神社へ戻って死亡したというのが一番妥当な経緯なんだろう……だが、俺としては扉の開かなかったあの時、すでにBは社殿の中で息絶えていたように思えてならないのだ。


 社殿の中にいるはずなのに、突然、背後から姿を現したB……一緒に帰って来たコンビニで気づけば消えていたB……俺の家の前に現れ、スマホで話したあのBと名乗る得体の知れないもの……すべてを繋ぎ合わせると、たとえ非常識であってもその方がしっくりくる。


 あれは、何者かがBに化けていたんじゃないだろうか……?


 無論、そんなありえない推理、警察には言わなかったし、主張したところで聞いてはくれないだろう。


 けっきょく、わけがわからないながらも事件性はないということで、Bは病死扱いで一件落着することとなった。


 正体がバレたので諦めたのか? あの夜以来、二度とあのBもどきが家に来ることもなかったが、どうしてAやCの前には現れず、俺のとこにだけ来たのだろう?


 最初にBを閉じ込めようと言い出したのは俺だし、社殿に侵入したBに次ぐ共犯の罪に問われたのだろうか?


 Bの二の舞になることも、またあんな目に遭うのもごめんなので、とりあえず俺はすべてをAとCに話し、後日、三人でお祓いを受けにも行っておいた。


 もちろん、それからは心霊スポットで肝試しをするようなバカな遊びもしてはいない。


 もしかしたら、今もあの廃神社には人間を化かす、祟ると恐い狐の霊が棲みついているのかもしれない……。


(化かすもの 了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

化かすもの 平中なごん @HiranakaNagon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ