第15話 もはや恋人じゃん

「……なぜ俺の足の間に座る?」


朝ごはんを怜と一緒に作り終わったあと、当たり前のように怜が俺の足の間に座って朝ごはんを食べ始めた。


「この位置が落ち着くから?」


「このままだと俺が食べれないんだけど? 俺だって朝ごはん食べてないからお腹すいてるんだ」


「じゃあ私が食べさせてあげるよ。ほら、あーん」


そういう問題じゃないんだよなぁ……。今はもう姉さん達が出かけて居ないからいいけど、居たら絶対写真撮られて揶揄からかわれてたはずだ。


「私はどくつもり無いから、これ以外に朝日がごはんを食べる方法はないよ?」


「……あーん」


「普段からこれくらい素直になればいいんだよ」


怜に一口食べさせてもらったところで家のチャイムがなったので出ようとしたけど俺の足の間に怜が座ってるから立てない。ということで怜に出てもらって、俺はその隙に朝ごはんを食べ終わった。


「怜ちゃんっていつから朝日の家に来てるの? 見た感じ一緒に朝ごはん食べてたみたいだけど」


「怜は俺が起きた時に何故か知らないけど俺の布団の中にいたぞ? というか普通に学校がある日でも結構早く来て一緒に朝ごはん食べてる」


「……そうなんだ」


というか詩乃が来たっていうのにまだ俺の足の間に座るのかよ。怜が楽しそうならそれでいいか……詩乃は不服そうですけどね!


「……もはや恋人じゃん」


「そう見える? でも昔は朝日のお母さんがずっと家に居なかった時もあったし、朝日と朝日のお姉さん達三人と一緒に食べることもよくあったよ。だから恋人ってのは違うかな、これが私たちの普通」


そう、怜と一緒にごはんを食べることが俺にとって、姉さん達にとって当たり前のことだったのだ。今はもう母さんも居るし、怜の家で食べる必要は無いのだが、ずっと一緒に食べてたし、今もそのまま一緒に食べてるだけのことだ。


「そういえば、Twittツイットで今日はお泊まり会するって言ったんだけどさ。声だけでもいいから配信して欲しいって声が多かったんだよね」


「急に話変わりすぎだろ。まぁでも、今日は詩乃もいるし姉さん達が帰ってきたらできないぞ?」


「声だけなら私も出ていいよ。それにお姉さん達が帰ってきたら辞めればいいわけだし」


まぁ顔出しが禁止なだけで声なら大丈夫ってことかな? 一応今まで言ってなかったけど姉さん達にも配信をしてることを伝えておこう。別に家族内なら知られても問題ないはずだ。


怜が配信の告知をしている間に俺は姉さん達にメッセージを送ったのだが、怜と俺がVTuberをしてた事にものすごい驚いた。多分帰ってきたら詳しく話さないとなんだろうな。


「これでよしっ!」


怜がそう言うのと同時にTwittの通知がなってレイ・ターフェアイトと書かれているアカウントから今日の配信の内容を書いたツイートがされた。ものすごい勢いでいいねやコメントが付いていく。


「それじゃあ始めるけど、私はレイ、朝日はレオで……詩乃ちゃんはどうする?」


「シンガーソングライターの時の名前でいいよ」


「ほんとにこの前の配信で驚いんたんだからね? 朝日と配信に私の好きな曲を作ってる人が来て、それが朝日のともだちで私のファンだなんて」


偶然で済ませるにはちょっと無理があるくらいには有り得ないことが起こってはいる。


「それじゃあ始めるから、最初は二人のも黙っておいてね?」


そして怜がスマホで配信開始のボタンを押す。


「みんなおはよー! 今日は元々配信するつもりはなかったんだけど、声だけなら許可もらったから声を楽しんでね! そして今日さゲストもいます!」


『レオだな(確信)』

『レオだよな』

『レオ以外ありえないな』


「コメント欄の通り俺はちゃんといるぞ。あともう一人居るんだけど、意外だと思う」


「えっと……シンガーソングライターのShinoです。レイちゃんとレオとは友達で今日のお泊まり会に誘ってもらいました」


『三人が友達ってまじで奇跡だろ』

『女二人に、男一人……ふむ』

『なんか変な想像してる奴いるてw』

『レオは運が良すぎる』


「今はレオの家にいるんだけど、レオの家の人が帰ってくるまで配信を続けようと思ってるよ!」


怜は……俺の家でスマホを使って配信をしているということを除けばいつもの配信と何も変わらなかった。配信に出るのは初めての詩乃はいつもより口数が少ないけど、それも仕方ないことか。


『レオは二人の女子を家に入れて、何する気なのかな? (^^)』

『どっちを選ぶつもりだい?』


「選ばねぇよ? 二人とも大切な友達だ、優劣をつけることは出来ないな。逆にお前らはレイかShino、どっちが好きなんだ?」


俺がそう視聴者に問いかけると「もちろん私だよね?」と怜が、「私の曲もいいよ」と詩乃が。このままだと怜と詩乃の睨み合いがずっと続きそうなので使ってる配信サイトの機能で投票を作った。


「じゃあ三分間でレイかShinoかを投票だな。俺はその間二人の相手しとく」


ちょっと言うのは躊躇われるけど、二人が落ち着くなら言うしかないか……。


「勝った方は俺に何をお願いしてもいいぞ。ただし、どっちが勝っても喧嘩せずに仲良くしろよ?」


「「わかった!」」


さすがにここまで食いつくとは思わなかったな……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る