第14話 可愛いなぁ……ほんと
夏休みに入って今日は怜と詩乃が泊まりに来る日なんだけど、起きたら何故か知らないけど怜も寝てたよね。布団に入ってくるのは何回かあったことだけど、そのまま俺の布団で寝るってことは初めてかもしれない。
︎︎まぁいつも来るのは学校がある日だからだし、怜って中学の頃はそこまで早起きが得意じゃなかったからなぁ。
「夏休みだし、無理に起こす必要は無いか。てか、ほんとに無防備だよなぁ……信用してもらってるのはわかるけど、なんか複雑っていうか」
とりあえず俺はそのまま怜を起こさずに部屋を出て顔を洗いに向かった。
「姉さん達、こんな時間から出かけるの?」
「いやぁ、二人とも大学休みだし? 真昼はあたしが誘わないとずっと外に出ないからさすがに陽の光を浴びさせないと思ってね。あと真昼の服を買わないといけない」
「うぅ……大学生になってまで、連れ回されるなんて。それに、服なんて……パーカーでいい」
真夜姉と夕姉はファッション気を使ってるけど真昼姉に関しては本当に外に出ないから服がパーカーしかないんだよね。真昼姉って怜とかに色んな可愛い服を着せるけど、何故か自分でその可愛い服を着ないんだよな……。
「パーカーしか着ないのはもったいないって。せっかく真昼は可愛いんだから、それに似合った服を着ないと!」
「服なら怜に着せてるやつがあるからそれ着ればいいじゃん。それ着て三人で出かけてくれば?」
「朝日も、敵だった……」
普段から怜に可愛い服を着せまくってるツケみたいなものでしょ。別に似合わないってことは絶対ないだろうし、ちゃんとした服着て大学行けば人気出ると思うけどな。
︎︎消極的だから話しかけられてもちゃんと会話できるかは不明だけど。
「せっかくなら男の意見もね。ということで朝日にも選んでもらうから」
「俺もどちらかと言えば真昼姉と同類なんだけどな」
「男はそれでいいかもしれないけど、うちら女は違うんだよ。パッと見で可愛いと思ったやつを言ってくれればいいから」
「いや、俺は怜の様子見とくわ。どうしても俺に選んで欲しいのなら写真送ってきて」
話してて忘れてたけど顔洗いに来たんだった。
俺はしっかりと顔を洗った後、怜がいる俺の部屋まで戻るとまだ寝ていた。
「幼馴染とはいえ、よく男の布団で寝れるよなぁ……。もう小さい頃とは違うってのに」
俺の布団ですやすやの眠っている怜の頭を優しく撫でると、俺の手を握ってきた。やっぱり寝てる時は昔と変わらず子どもっぽい、昔も同じ布団で寝てた時に抱きついてきた記憶があるし。
︎︎今となればそんなこともないし、さすがに怜もちゃんとした体つきになってきてるわけだし昔のようにはできない。
(可愛いなぁ……ほんと)
一緒にいると俺が霞むくらいに怜は可愛かった。学校でも一緒に歩いてたら色んな人が見てくるけど、怜の方しか見ていなかった。
︎︎俺が向けられていたのは男子からの嫉妬の視線ぐらいで、『幼馴染』っていう俺にしかなれない関係じゃなかったら今頃どうなってたことだか。
「いつの間に忍び込んで寝たかは知らんがそろそろ起きろ。夏休みだからといってだらけ過ぎてたらあっという間に課題が終わらないまま夏休み終わってるぞ」
「起こしてー」
「はいはい、今姉さん達が真昼姉の服を選んでるから怜も行ってきたら?」
普段から着せ替え人形にされているからなのか、俺がそう言うと今までのお返しをすると言って飛び起きて俺の部屋を出ていった。さっきまで寝てたやつのスピードとは思えないな……。
まぁ怜も起きたことだし、俺も真昼姉の服選びに行くとしますかね。多分俺が口を出す隙なんてないとは思うけど。
§
「も、もう本当に、無理……休まして。お姉ちゃんを……止めて、朝日ぃ」
「どうせ一つの服しか着れないんだからさ、何着も着せる必要ないでしょ。俺はこのワンピースがいいと思うから、真昼姉は早くこれ着て出かけてきてくれ……俺の部屋まで声が聞こえてるんだよ」
「そこまでうるさかった? ごめんね朝日。でもあたしからしたら真昼に何を着せるかは重要だからつい、ね。あと、三人とも出かけるから今日も任せたよ」
「分かってる」
俺は元々メイクなんて興味なかったけど、一回やった時に楽しいと思って、そのまま今まで続けてきて姉さん達が出かける時に毎回メイクを任されるくらいには上手くなっていた。自分で好みの顔を作れるって考えたらメイクって案外楽しいものだ。
︎︎まぁ買いに行くのまで俺に任せるのは本当に勘弁して欲しいけど。
俺は真夜姉と夕姉のメイクをして、真昼姉もしようと思ったのだが「僕は、今のままでいい……」と言うのでメイク道具を片付けて怜と一緒に三人を見送った。
「俺がやってる間ずっと見てたけど怜もやって欲しいのか?」
「やって欲しい……けど私も今のままでいいかな、これがありのままの自分だし。配信で朝日にマニキュアをやってもらうってもお泊まり会が終わったらしようね?」
「そういやそんなことも言ってたな」
怜の配信にお試しで出たの時に特技がメイクってことは言ってたし、この内容の配信を待ち望んでる人もいるかもしれないしな。
「ちなみに、そのことは叔父さんに相談して案件を取ってもらってるからこの配信は真面目にやらないとだね?」
「配信のことに関しては本当に仕事が早いな。そこまで準備してるのなら俺も断れないしやるけど、怜の配信を見てる男性視聴者は俺がマニキュアしてるのを見て楽しいのか?」
怜の配信は男性視聴者の方が多いだろうし、女性視聴者もいるとは言っても俺のやり方って完全独学だし参考になるか分からない。
「コメント欄を見てる限り男女関係なくメイクの技術を学ぼうとしてる視聴者多かったよ?」
「そうなのか……。そういえば怜ってご飯食べてから俺ん家来たのか?」
「食べてなーい」
やっぱいつも通りか。
「それじゃあ作りに行くぞ、俺も食べてないし」
「分かったー!」
そして俺と怜はキッチンに移動して朝ごはんを作り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます