第12話 俺は嫌だね、絶対
今日は一学期の終わり、今日が終われば夏休みなので教室はいつもよりも盛り上がっている。中には夏季講習があるだとかで嘆いている人もいるけど大体の人は夏休みの訪れを喜んでいた。
︎︎俺は一時期塾に入ってた時期があるが授業には出てないし、既にその塾はやめている。
俺が入ってたのは有名塾とかではなく真夜姉の友達がやってる私塾。もうほんとに潰れかけで進学実績が欲しいから助けて欲しいと真夜姉とその友達にお願いされて俺はその私塾に入った。
︎︎そのまま高校受験をして今の高校に受かったと同時にそこは辞めた、入った後は俺にもう関係ないだろう。
「朝日は何か夏休みに入ったらやることってあるの?」
「自分からやろうとしてることは無いけど、多分姉さん達の買い物に付き合わされる。そしてメイクとかマニキュアもやらされる」
まぁメイクするのは楽しいからいいし、買い物も荷物持ちだけど最後に好きな物買ってくれるから断りきれないんだよな。
「そういえば朝日がメイクしてるところ見た事ないかも。配信でも特技の中に入れてたし、配信でする?」
「するんだったら怜と一緒に配信して、手を映しながら俺がやるって感じになるけど? 手とか見せても大丈夫なものなのか?」
「手くらいだったら他にも出してる人は居るし大丈夫だよ。周りに何も置かなければ顔が反射する心配もないし」
俺の心配しすぎかぁ? まぁVTuberのことに関しては俺より断然怜の方が経験があるわけだし、怜に従った方がいいだろう。
そんなことを話しているとチャイムが鳴ったので「やばっ」と言いながら怜は教室に戻って行った。
「今日も相変わらず仲がいいねぇ? ずっと教室から見てたのに気づかないとは思わなかったよ」
「マジですまん、というか居るんなら声掛けてくれても良かったんだぞ? 怜だって新しい友達と話したいだろうし、俺も話したい。というか話すのがもはや日課」
「怜ちゃんと朝日って結構前から付き合ってると勘違いされるくらいに距離近かったでしょ? そこに私が混ざっていいのかなぁって」
多分大丈夫だな、女子二人で男子一人になった時に周りから注目を集めるのは男子一人の方だからな。逆に学校内で告白されまくってる詩乃が俺のとこに混ざってくれるのかってところもある。
怜と一緒にいるのだって幼馴染だから認められてるって気もするしな。そうじゃなかったらほかの男子から反感食らってそうではある。
︎︎まぁ詩乃と話してて今のところ何もないしあんまり気にする必要も無いか。
「そういえば昨日の見てたんだろ、どんな感じだった? 俺的には上手くできたと思ってるんだけど。怜にも認めてもらったし」
「やっぱり声は良いんだよね、だからVTuberって向いてると思うよ? まぁ鈍感なのがあれだけど……」
声はね? まぁ自分でも顔がいいとは思ってないけど……女子に、しかも仲のいい詩乃に言われると結構くるものがあるな……。
「なぇ詩乃、なんか生徒会の人がこっちを見て手招きしてるけど……どっちが呼ばれてると思う?」
「朝日でしょ、私は軽音部だから勧誘されるはずないし。朝日はどこにも所属してないでしょ? それか問題を起こしたか」
問題起こしたら一番最初に来るのは先生だろうし勧誘なんだろうけどさ、なんで俺のところに来るかね? 手は抜いてるし、怜の方が成績で見たら優秀な筈だ……怜が何かを言ってなければの話だけどな。
「ちなみにだけど呼んでるのは俺?」
無言で頷く生徒会の人、終わったわ。
何も悪くないと信じて着いていくとやっぱり生徒会室に連れてかれたし勧誘じゃねぇか。というかホームルームはどうした、生徒会の人は出席しなくていいのか?
§
えぇと、生徒会室のソファー座らされて周りには生徒会役員の人が二人、圧迫面接もいいところだろ。
「単刀直入に言います、生徒会に入る気はありますか?」
「ない、他を当たってくれ。俺は平凡で居たいんだ」
「平凡な人は全国模試で一位を取らないんですよ」
なんで知ってんだろ、怜か? 怜なのか?
「……誰から聞いた?」
「誰も何も……私、その場に居ましたから」
その場に居た……? この子、どこかで見たことあるような気がしなくもないけど……どこ出会ったんだっけ。
「まぁ、そんなことはどうでもいいんです。あなたが優秀だということには変わりないので」
「優秀だから生徒会に入れってか? 生徒会に入って何の利益がある、俺にだってやることがあるんだ」
前までなかったが今はVTuberになって配信をしなければいけない。生徒会なんていう入らなくてもいいところに時間を使うつもりは無いし、何よりも怜との時間が減る、何を言われても入るつもりは無かった。
「進学しやすくなりますよ?」
「興味無い、俺は頭のいいところに行きたいわけじゃないんだ。生徒会に入るなんて俺は嫌だね、絶対」
怜が生徒会に入るのなら俺も入るだろう、ただ向こうは怜を勧誘するつもりは無いみたいだしな。
「それに、優秀だから……そんな理由だけだったら俺じゃなくても入らないぞ? 勧誘した理由を教えてくれ、話ぐらいなら聞く」
「なら……なぜあなたに目を付けたというところから話しましょう、二人きりで」
「……わかった」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます