第7話 別に好きじゃないし!
今月何回入ったから分からない会社の中に入ると怜は他のVTuberの人と話していたのでとりあえず怜のことは気にせずに社長室に入る。
「よく来てくれたね、昨日の時点で話は終わってるからあとは親御さんにサインしてもらって、配信の日数を週何日か決めてもらう」
「じゃあ週二で、コラボの申し込みがあったら追加してもいいです。もちろん怜とずっとコラボするつもりはありませんから」
視聴者とて、ずっと同じ人とコラボしているのを見たくはないだろう。それに新参の俺が最古参の怜とコラボし続けたら幼馴染以上の関係を疑われかねない上に怜を尊敬してる人がいたら俺の存在は邪魔だろう。
「それじゃあ契約成立だ。今日はもう帰ってもらっても構わないし、マネージャーの話をしてもどっちでもいい」
「それじゃあ母さんは先に帰ってていいよ、俺は今日のうちにできることはしておくから」
「じゃあご飯は冷蔵庫の中に入れて置くから帰ってきたら温めて食べておいてね」
「分かった」
母さんは帰って、俺はマネージャーの話をするのだがまだ初配信もしてないのにマネージャーって付くものなんだね。ここまでの事務所ならマネージャーもいっぱい居るのかな?
「それでね、朝日くんのマネージャーなんだけど怜くんのマネージャーと同じにしようと思ってる。その方がこちらとしても楽だからね」
だからこんな早くマネージャーの話が来たのか。まぁ怜のマネージャーってことはマネージャーとして働いてきた日数もその分長いはずだ。
「それじゃあ怜と同じマネージャーにするので問題ないです。話は終わりですか?」
「そうだね、朝日くんがここまで早くマネージャーを決めてくれるとは思ってなかったよ。今は怜くんと一緒にいるはずだ、話に行くといい」
あの人って他のVTuberじゃなくてマネージャーだったんだ、怜の距離が近すぎてマネージャーだと思わなかった。とりあえず社長室から出ると、まだ怜はそのマネージャーと話していた。
「君が朝日くん? ふむふむ、中々……怜ちゃんと合わせて、お似合いだね」
「な、何の話ですか? というかジリジリ迫ってこないでくださいよ怖いんで。ねぇ怜、助けてくれない?」
「
なんで怜がマネージャーの夫さんと関わりがあるのかが分からないがとりあえず解放されたのでそれでいいだろう。とりあえず名前は稲荷さんって言って、ちょっと特殊な性癖がある人なのかな?
「いやぁちょっと取り乱しちゃっよ。稲荷の名前は
「あと稲荷さんの夫さんもここで働いてるよ、今日はいないと思うけどいずれ挨拶にし言ったら?」
「まぁそうしようかな。それで今から会社の案内を頼むことは出来る?」
「もちろんいいよ! それじゃあ行こうか」
怜は公園に遊びに行く小さい子どものように微笑みながら俺の手を引いて歩き出した。それを稲荷さんは親みたいに穏やかな笑顔で見つめていた、稲荷さんが好きなのって幼馴染でしょ。
§
会社の中にはカフェがあったり、タレント用の部屋がいっぱいあった。
当たり前だけど俺はまだデビューしてない判定だから俺用の部屋はなかった。まぁ多分俺用の部屋になるんだろうなぁって言う空き部屋はあったけどね。
︎︎今まで怜と一緒に居たから予想できるけど、主にその自分の部屋で配信をしてコラボの時だけ場所が変わるって感じかな?
「私は学校があるからカフェを滅多に利用しないけど、社員とか他のタレントさんはよくここで昼ごはんとか食べてるんじゃないかな?」
「まぁ怜だって配信するのは学校終わったあとか土曜日の昼だもんな。土曜日だとしても自分で弁当持っていってるし」
もちろん土曜日も俺は怜と配信について行ってるのだがその時に自分の弁当だけじゃなく俺の分まで持ってきてるんだよな。誰が作ってるかまでは知らないけど多分怜本人なんだろうな、じゃなかったら『今回のは自信作なんだよね』と『美味しい?』とか言わないはずだ。
「まぁでもこれからは俺も配信することになるし、怜と一緒にご飯を食べることも減るかもな。それに同じ高校だから怜と配信時間は被るだろうし、かと言って俺は怜とばっかりコラボする訳にもいかないからね」
「そうじゃん! 朝日もVTuberになったから朝日と一緒に居れる時間が減るじゃん!」
気づいてなかったのかな……。まぁ怜は怜で俺をVTuberにさせるので必死だったんだろうな。
「まぁいいじゃん、コラボする時はコラボすればいいし、そもそもずっと前から俺と怜はずっと一緒に居るんだし。この先もずっと怜と一緒に過ごしていきたいと思ってるから、ちょっとぐらい一緒に居られる時間が減ってもいいだろ? 怜は俺のこと好きすぎなんだよ」
「べ、別に好きじゃないし! そういう朝日こそ、そんな告白みたいなこと言ってるんだから私の事好きなんじゃないの!」
「別に好きじゃないし! ただ……大切な幼馴染な事には変わりないかな。俺にとって必要不可欠な人だよ、怜は」
俺は少し恥ずかしくなって怜から顔を逸らした。いつもだったらこの後絶対からかってくるのに、おかしいなと思ってたら怜も顔を背けていた。
少しだけ見えた怜の顔は赤らんでいて気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます