第5話 これで朝日もVTuberだね!

俺は社長室に向かってるのだが、よく考えたら俺はここに所属してるわけじゃないししてたとしても社長室に向かうのはまずい気がする。今すぐ戻ろうかなと思ったけど来た方向に話し声がする、帰れないなこれ。

 ︎︎俺は凍夜さんと話がしたいんだけど、俺のことを知らないここの人からしたら止めないといけない存在だろう。


「あ、やっと見つけたよ。誘ったのは私なんだから、話をするなら私も一緒に行くよ」


「ありがとう、これで誰かに見つかっても不審者扱いされないで済む」


「いや別に私が朝日を呼ぶことは大体の人が知ってるし大丈夫だよ? それに朝日は顔が悪そうじゃないもん、勘違いされることないって」


悪くない顔ってどんなだよ、普通に顔が優しくてもヤバいやつはやばいでしょ。それにだったらこの会社の中に知らない人だっているってことだし本当に怜が来てくれて助かった。


「しゃちょー入るよ!」


「もう既に入っているというのは言わない方がいいかい? まぁいい。朝日くん、視聴者からも好評だったよ……それで、うちの所属になる気はあるかね?」


早速本題かぁ、俺だってそれを話すつもりで来たし別に問題は無い。


「今日の配信は途中で怜が寝ちゃって俺だけでやってましたけど、正直に感想を言うと楽しかったです。こんなに楽しくて、お金も稼げる仕事なんて中々ないですよ、でも俺たちはまだ高校生ですからね?」


「つまり、勉強する時間が欲しいと? その辺りは個人で決めれるようになっている、好きな日を休みにすればいいさ」


さすが、会社が全てを支配するんじゃなくて所属者にある程度の自由を与える。当たり前のことかも知らないけど、出来ないところは多くあるし実際余裕があるところじゃないとタレントにある程度の自由を与えることが出来ない。

 ︎︎俺は凍夜さんの会社が経済的にも人材的にもキツかった頃を知っている、あそこからここまでの大手になれたのもこの体制があるからだろう。


「そちらの基準として、月に何回の配信が基本ですか? まずはその基準から初めて、それで順位が下がらないのであれば配信する日を増やしていきます」


「……そう言うってことはこっちはもう朝日くんが入る前提で話を進めていいのかな?」


「ええ、入るつもりですよ」


配信をしてる途中から既にここに入ろうとは決めていた。だけど俺自身、勉強を怠るつもりはなかったし怜のようにあんな高頻度で配信をしながら勉強するのは俺には無理だと判断した。

 ︎︎俺は勉強を続けながら配信をしていきたいのだがあまりにも頻度が少ないと視聴者も冷めてくる、だからせめて会社の基準の日数だけ配信をしていこうと思っている。


「それじゃあその他諸々の話をして、後日に親御さんと一緒に契約書を書きに来てくれるかな」


「その他の話とは?」


「会社の規約とか、収益の分配、あとは契約金とかだ。今まで朝日くんに渡していたお金は君を引き入れるための前金だと思ってくれていい」


そこまでして凍夜さんは俺のことが欲しいのか……。


そして怜が一時退出して、俺は凍夜さんに一枚の紙を渡される。


「これには主な規約が書いてある、そして契約金は書いてあると通り怜くんと同じく50万。そして収益、何対何がいいかね? こちらは勧誘してる身だからね、ある程度の融通は効かせよう」


「別に俺はお金が欲しいわけじゃありませんし、そっちの割合が多くなっていいですよ」


そもそも俺には渡されてた前金があるし、姉さん達からのパシリで余った差額で貯めたお金がある。どっちにしろ俺は本か誕プレでしかお金使わないし、収益を得すぎたら逆に面倒くさくなるし少なくていい。

 ︎︎VTuberがアルバイトってことになるのかは知らないけどなるんだったら103万まで大丈夫なはずだ。


「確定申告はこちらが行うから心配しなくてもいい」


「なら税金を取られることも考えて会社側が六割、俺の方は四割でお願いします」


「本当にそれでいいのかい? もし年収が1000万だとすると半分近くは税金に取られた上に六割を会社に渡すと君の取り分は200万になるが?」


「200万でも多いくらいですよ!?」


ほんと、成功してる経営者ってお金の感覚がおかしい人しか居ないのかな。社会人で200万なら少ないぐらいなのかもしれないけど、俺は高校生だ。

 ︎︎200万なんて額はもちろん手にしたことは無いし手にしたとしても逆に怖い。


年収が1000万だったらの話だし、実際はもっと少ないだろうけど高校生である俺にとっては多いことに変わりがないだけどね。


「あと、ここは恋愛OKなんですか?」


「個人的にはOK……と言いたいところだが、視聴者が許すとは思えないがね」


俺はその言葉である一つの決心が着いた。



§



凍夜さんから続きの話は親御さんと一緒にと言われたので俺は会社の外に出た。


「別に話が終わるまで待たなくても良かったんだぞ?」


「いやいや、朝日がせっかくVTuberになるんだからそりゃ終わるまで待つでしょ。これで朝日もVTuberだね!」


「別にまだ話をしただけで契約書は書いてないし正確にはまだ所属したわけじゃないけどな」


まぁ母さんに契約書を書いてもらえば俺も晴れて怜と同じ事務所でVTuberに……。


「ん?」


「どしたの? 急に立ち止まって」


「俺って怜と同じ事務所に所属するんだよな?」


「そうだね」


「じゃあ俺は所属したら怜のことをって呼ばないといけないの?」


怜が調子に乗るから呼びたくないと思う朝日であった。


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