第4話 朝日、VTuberになりたい?
私は二人の配信を社長室からずっと見ていた。
「社長、いつまで配信を見ているのですか? 早く仕事をしてください」
「二人はこの会社がまだまだ小さかった頃に勧誘した二人だ、その二人が今一緒に配信してるんだ、見るしかないだろう? その時、勧誘には失敗したがやはり朝日くんには視聴者を楽しませれる才能がある」
怜くんに何とかして朝日くんをRestartに引き込めないか頼んだ甲斐があったものだ。朝日くんは類稀なる才能の持ち主だ、その朝日くんをそのままこちらに引き込めたのなら大きな利益になるだろう。
︎︎何より朝日くんは怜くんの幼馴染だ、二人がコラボした時にしか出せない味もあるだろうな。
「社長が二人に執着する気持ちも分かりますけど、社長にはやる事がありますから。見たいのなら早く仕事を終わらしてください」
「真面目で優秀な秘書がいると、こういう時裏目に出るな」
「この会社に私を呼んだのは社長の方でしょう?」
「はは、そうだったな」
§
今日だけやるつもりだったけど案外楽しいなVTuberって。
「レオ、私も眠くなってきちゃった……。ちょっと肩貸してくれる?」
「あーいいよ、レイが寝ても起きるまで俺が繋いどくし」
俺は配信の終わらせ方が分からないから、怜が寝ちゃったら起きるまで配信を終わらせることが出来ないんだよね。同接5000人って書いてあるし、寝てる怜をそんな大人数の前で放っておく訳にも行かないし。
『チャンネル主が寝ちゃダメでしょw』
『そこどきやがれください』
『羨ましいなこのやろ』
『お巡りさんこいつです』
『お触りマンこいつです』
『レイちゃんの匂い嗅ぎたい』
『お巡りさんマジでコイツです』
「よしのりお、お前の名前は覚えたからな。まぁレイは寝ちゃったから次からの質問は俺が答えていくぞー」
というか怜が居なかったら実質今のが俺の初配信みたいなものじゃん、まだデビューしてないのに。このRestartっていう事務所は凍夜さんが経営してる訳だし、俺が入るとなったら多少融通は効かせてくれるだろう。
︎︎俺自身、全国模試一位というのを諦めれば普通にVTuberはできるわけだしそれを捨てたとしても学校内での順位は変わらないでしょ。
ただし、朝日は決して驕っている訳では無い。全国模試一位の人間が多少勉強時間を少なくした程度で学校内のテストの順位が変わるはずもないのだ。
︎︎それにVTuberとして配信する日ができたとしても朝日は他の空いてる日の勉強時間を増やす、もしかしたら全国模試の順位すら変わらないのかもしれない。
「お、初めて女性の方から質問が来た、なになに……『好きな人がいるのですが、その人は色んな人から告白されていて全て断ってきています。私の思いを受け取ってくれるか分からないのですが、そういう場合レイちゃんならどうしますか? ちなみに相手は女性です』だって」
うーんこれ怜宛の質問だし、俺が答えていいのかなぁ? それに恋愛相談だし、その上百合ってやつでしょ。普通の恋愛経験ですら俺は無いのに百合の恋愛相談まで上手くできるかな。
「レイみたいに上手く言えないかもしれないけど、別にその人を好きになることは悪いことじゃないし誰にも文句を言われる筋合いは無いと思う。まぁその気持ちを受け取ってくれるかは相手次第だけど、土俵は普通の恋愛と同じだし頑張ってみれば?」
『言ってることがイケメン』
『俺もこんなことをサラッと言える男になりたかった』
『かっけぇ』
なんか同性愛者の人が変な目で見られてるけど、人がどんな人を好きになっても何も悪くないしその人の自由だ。それを周りが変だと言うから今の人みたいに自信が持てなくなる人が出ているわけで、さっきも言った通り全て同じ恋愛なんだからそれを否定するのは違うと思う。
「さっきから何も疑問を持たれてないけどさ、俺はまだデビューもしてないし配信するのも初めてだからどこか変じゃないか?」
『初配信とは思えないほど完璧だぞ』
『早くデビューしてくれ、最速でチャンネル登録するから』
「期待してるところ悪いけど、俺はデビューすると決まってないからね。今日はお試しみたいなものだからさ」
『まぁ仕方ないか』
『今日見れただけでも幸運だろ』
§
それから何とか怜が起きるまで配信を繋いで置くことが出来た。
「繋いでてくれてありがとうねー、それじゃあ今日の配信は終わり! レオがデビューするかはまだ分からないけど、次の配信も楽しみにしててねー!」
『おつー』
『おつ、普通にレオくんにはデビューして欲しいな』
『それな』
怜がパソコンを操作して配信を切ったあと、電源を消した。
「今日も楽しかったぁー」
「途中から寝てたけどな」
「それはいいの、それでどう? 朝日は今日ゲストとしてお試し出演してみて楽しかった?」
「楽しかった、視聴者と話すのも……質問に答えていくのもね」
それにVTuberだから仮初の顔で、視聴者達と関わることが出来る、正直俺がVTuberになれば今までより楽しく過ごせるようになるだろう。
「朝日、VTuberになりたい?」
俺は数秒間考えて、怜に言った。
「それじゃあちょっと凍夜さんに話をしてくるよ」
それはVTuberになると言ってるも同然の事だった。
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