夢の続き
次の日の夜、私は仕事の疲れからか歯も磨かずに寝てしまった。
「綾乃、どうして昨日は逃げたんだ?」
気が付くと、目の前にSくんの顔があった。昨夜見た夢と同じ、不気味な笑顔を浮かべて、さらにこちらに顔を近づけてくる。
「ひいっ!!」
必死に身をよじり逃げ出そうとするも、私を押さえつけている彼の腕の力は強く、びくともしない。
誰か、誰か助けて……誰か……
「『誰か助けて』? 誰も来ないよ。ここは二人きりの世界だもの」
その声は次第に歪み、もはや声とは呼べない奇怪な音がぐわんぐわんと反響する。
これは昨日と同じ、悪い夢に違いない。
頬をつねろうにも、両腕が押さえつけられていて動かせない。しかしここは無理やりにでも目覚めないと。
どうか覚めて、お願い。覚めろ、覚めろ!!
気づいた時には、私はいつものように自室のベッドに横たわっていた。しかし荒い呼吸と激しい動悸が、先ほどの恐怖感を物語っている。やけにリアルな夢だった。しかも二日も連続であんなに嫌な夢を見るなんて。
寝るのが、怖い。
寝てしまったらまたあの夢の続きを見てしまうのではないかと思う自分と、明日も仕事なのだから早く寝なきゃいけないと思う自分が頭の中で争っている。しかし、あの視界いっぱいに広がる不気味な笑顔が、あのねっとりとした囁き声が、今この瞬間も脳裏にこびりついて離れない。
時計を見ると、午前二時を回ったところだった。私は仕方なく、夜明けまで本でも読みながら過ごすことにした。
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