親友の忠告

 あれから一週間が経ち、私はいつも通りの日常に戻りつつあった。彼から連絡が来ることはなく、嫌われるのが怖くて私からも連絡はできなかった。


 私、このままでいいのかな。このまま疎遠になっちゃうのかな。仕事中も、そんなことが頭の中をぐるぐると回っていた。このままじゃいけないと思い立った私は、一番の親友に話を聞いてもらうことにした。



 「綾乃あやの、一体どうしたのよ、ニヤニヤして」


 親友は開口一番そんなことを言う。私は一週間前の出来事を洗いざらい話した。親友もきっと応援してくれるだろうと思った。しかし、親友は深刻そうな表情を浮かべ、私の目を真っすぐ見据えて言った。


 「あの人はやめておいたほうがいいよ」


 「どうして!?」


 きっと何かの冗談だと思った。しかし、親友はにこりとも笑わず、真剣な面持ちで続ける。


 「とにかく、あの人からは離れたほうがいい。きっとあんたを不幸にするよ」


 親友が私のためを思って言ってくれているのはわかる。でも、今の私には受け入れることはできそうになかった。


 「ごめん、私、もう帰るね」


 「ちょっと綾乃!」


 親友の制止も聞かずに走り出す。その手にしっかりと携帯を、彼との唯一の繋がりを、握りしめて。

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