監視
「なるほど~。千佳さんは、こんな風に想ってるんですね~」
道場の様子からシャワーシーン、学園の様子までの千佳の状況をちづるは自室のモニターの前で眺めていた。
分厚い眼鏡の奥の瞳は、冷静な観察者としての光を宿している。
音までは拾えないが、情報担当たるちづるは唇の動きから会話の内容もわかる。
「時間、そろそろかな~」
ちづるがモニターの画面を切り替える。千佳の代わりに厳つい顔の中年男性が映し出された。ネクタイを丁寧に締め、スーツにはしわ一つない。
情報担当たるちづるの直属の上司にあたる人物だった。
彼に対し、ちづるは淡々と用意してあった文章を読んでいく。
「定時報告、以上になります~」
「ご苦労。引き続き、但馬宗徳とその周囲の監視を頼む」
「……」
「なんだ? 何か言いたそうな顔だな」
「いえ~、なんでも~」
「しかしお前が自ら監視を申し出た時は驚いたぞ。但馬宗徳はお前にとって、」
「過去は過去です~。仕事は仕事として、やり遂げる主義ですから~」
それ以上を言わせない、と言わんばかりにちづるは上司の言葉を遮った。
「そうか。お前も休養はしっかり取るのだぞ」
ちづるは再びモニター画面を切り替え、録画した画面を再生する。
千佳と並んで登校する宗徳の姿を見ながら、滅多に手入れしないくせっ毛にそっと手櫛を入れた。
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