第14話 妹

「あっ」

「…丁度よかったわ、貴方とも話したかったの」

「………って、何するんですか!」

「お話ししましょうね」



さて、色々なことを踏まえて一度考えてみたが何から手を付けたらいいものか…

そんなことを考えていれば目の前から現れ直ぐに方向転換しようとした妹の腕を即座に掴みそのまま引っ張っていく

暴れているものの罰と称して定期的に筋力トレーニングしている私である

その辺の男には負けるかもしれないが生粋の深窓の令嬢であるミーティと比べれば私のほうに勝利の天秤は傾く

暴れている彼女を捕まえ続けるのは難しいものの歩き出すことで暴れる動作が小さくなったミーティを連れて何時もの庭に向かった



「ほら、姉妹水入らずのお茶会をいたしましょう」

「私には、予定が…」

「大丈夫よ。そんなに時間はかからないわ。確認したいことがあるだけだもの」



席に誘導して座らせれば一度は立ち上がろうとしたものの一度お茶会の席についてしまえばお茶を一杯も飲まずに立ち上がるのは失礼にあたることを思い出したのか座り直す

こういうところは教育が行き届いているが故の融通の利かないところだろう

お茶を一杯も飲まないのは失礼にあたることを知っているのはサティアであり、私は知らないため私はこの状況でも席を立てるがミーティの気持ちも十分にわかる



「ねぇ、ミーティ。貴方最近やっていることがあるようだけど順調なのかしら」

「………順調じゃないわ」



どうやって話をしようかと考えながら話したせいか結構な圧を与える話し方をしてしまっている気がするもののミーティは言葉少ないままだが返してくれた

これもお茶会に招待されたからには無視してはマナー違反であるというマナーに乗っ取った行動だと思うが今まで無視され続けてきたからか嬉しくなってしまう



「そうなの。もし、何か私に相談したいことがあればいつでも言ってちょうだいね」

「っ、」

「自分のことは自分で決めると思っているかもしれないけど手を借りるのも案外大切よ。自分になかった価値観を教えてもらえ」

「っ!姉さまは!」



お茶を用意してもらいながらも続けて言う

何を話したらいいのか、何をしているのかは正直まだわからないままだが腹を割って話してみる。自分の言いたいことを、伝えたいことを、そしてお茶会で新しくできた友人に教えてもらったことを踏まえて

正直なところロイ様とミーティが付き合うとかになれば複雑どころか自分が傷つくとは思っているがそれはそれ、これはこれ

かわいい妹を応援したいという気持ちだって私にはあるのだ。もしかしたら、話し合えばいい方向が見つかるのかもしれない

そう思いながら告げた言葉は大きな音にさえぎられた

机に両手をつきミーティは立ち上がりながらも大きな声で叫んでいる、あまりにも普段と違う姿に驚いて思わず動きが止まってしまう



「あなたは、いいわよね!愛されてて!私は、私は…母様にも、あの人にも、愛されてない…」

「……」

「ずるいわ、ずるい…あなたは、ずるい。なんで、なんで…私だって、がんばってるのに」



ボロボロと大粒の涙を流しながらもそう告げる妹の話は脈絡がなくて少しもわからない

だが、一つだけわかることがある

今まで通りの私だったら考えもつかずに何も行動できないだろうが、サティアならわかる。泣いている幼い子がいれば抱きしめてあげることが大事なのだと

立ち上がって横に移動して抱きしめる

何を言っているのか、何を抱えているのかわからない

分からないままだが抱きしめることはできる

サティアは抱きしめられないけれど、今目の前にいる子は抱きしめられる


温もりと濡れる胸元を感じながらゆっくりと頭をなでた



「ごめんなさい、ミーティ。私にはあなたが何故怒っているのかわからないの」

「っ、」

「だから、教えてちょうだい。貴女のことを私に教えて。私、貴女とちゃんと家族でいたいの」

「……ね、えさま」



姉さまと最初に彼女は言った

その呼び名で呼んでくれた

姉妹らしいことなんて何一つしたことなくて

お茶を囲むことすら一度もなかった

そんな姉なのに彼女は私を姉さまと呼んでくれている


この子を大事にする理由はそれだけでいい

それだけでこの子を大事に思える

大事に扱う方法を私は思い出している



その事が誇らしく思えた

サティアがいてくれて本当に良かった

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