閑話休題 新たな友人

貴族だからといって平民を見下している

気分屋で気に入らないものが居ればすぐに癇癪を起す

第二王子を虐めて遊んでいる

その美貌を笠にして好きな恋人を囲っている



レデアナ・ユークリフという少女の悪い噂話は留まることを知らないほどだった

そんな彼女と会ってくれと婚約者に言われた時は断ろうかとすら思っていたほどだったが、領地が隣同士で幼馴染でもあり心底惚れこんでいる彼女の頼みを断れるほどの意思がなかった


渋々会いに行ったあの場で見たのは噂に違わない、第二王子が来る予定だというのに自分が屋敷の主であるかのようにふるまう姿だった

公然の秘密とはいえ秘密にしている我が家の状況をからかうためにそんなことをしていると感じて心底軽蔑した

相談内容は兄弟仲をよくするということだったし、きっと嫌がらせをするために適当な内容を取ってつけただけだろうとその部分でも強い拒否感を覚えた

婚約者であるアイラには叱咤されたがそこまで反省する気も起きていなかった




数日後俺だけで呼び出された時の姿を見る時までは



あの日は癇癪を起さなかったがもしかしたら、癇癪を起して罰を与えるために呼びだしたのかもしれないと戦々恐々としながらもいったお茶会ではまた主人のようにふるまう姿があった

嫌がらせにしては手が込んでいると、その時は感じた



会話をしていくにつれて段々と目の前の彼女の認識が変わっていくのを感じた

あの日は視野が狭まっていたのか感じなかったが傍付きメイドも嫌々従っているというよりは主人に従えて誇らしいという気持ちを持って働いている様子が感じられる


噂話を頭から消し去って目の前の彼女をみると嫌がらせだけでは身につかないほど手際がいい事が分かる

騎士団に所属しており腹芸が得意ではないとはいえ、貴族生まれではあるため一朝一夕ではこのマナーを身に着けることは難しいことは見るだけでも伺える

つまり、彼女は公爵家の主人であるように動く術を幼いころから教え込まされて今日を迎えているのだ





「……貴方の悪い噂を信じて態度を弁えずに申し訳ない」

「先ほど謝罪なら頂きましたよ。そう何度も謝られるようなこと私はされていません

から」

「………」



柔らかく笑う彼女は噂話とは明らかに違っていて

疑惑は確信に変わる

彼女は噂話とは違う人間なのだと

自分は噂話をうのみにして何も知らない彼女を否定していたのだと

つまり、あの時の相談もきっと彼女にとっては真剣な話だったのだ



「もし、良ければ今後も相談があるなら気軽にしてくれ。何時だって力になろう」

「……いいのですか?その様な安請け合いをしてしまって…」

「勿論だ」



頷く俺に彼女は笑う

2度目のお茶会での彼女の立ち位置こそ変わりはなかったが1度目より心地のいい空間だった

何物にも代えがたい守りたいと願う幼馴染とは違う感情

きっとこれを友人というのだろう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る