第11話 会えない婚約者と妹
「そこの計算間違っているわよ」
「はい、こうですか?」
「えぇ、満点」
領地の業務計算の最終報告で間違っていると指摘された計算をやり直すとようやくOKが出る。私はお義母様の指示で領地管理も携わらせてもらっている、王家に嫁に出るからいらないだろう、むしろ第二王子なのだから嫁にいかなくていいだろう。という意見もあるだろうが、第一王子の出来が悪すぎて第二王子と嫁が実際の業務を担う…手はずになっているのだ。この国は血筋を重要視しすぎて少しおかしいとは思っている
一段落がつきこちらをようやく見た第二夫人は物言いたげな私に気付いたのかソファに座るように手で指示をする
「失礼します」
「それで?何が聞きたいのかしら。お嬢様」
「お義母様にお嬢様といわれるのは変な感じがしますわ」
「ふふ、これは失礼」
お茶セットのセットや様々な物が綺麗に並べられている第一夫人とは違い、机と本棚、今座っているソファ以外は何もないのが第二夫人の部屋だ。
本人は実用性を重視していると言っていたが、まさしくその通りなのだろう。いらないものを持たない彼女らしい部屋で、見たことはないがドレスも最低限のものしかないと聞く。その点私の実母である母の部屋はドレスで溢れかえっている。部屋ですら個性が出ている
「そうやって思考をそらすなら自室でやりなさいな」
「…失礼しました。最近ミーティの様子が変なのですが何か知りませんか?」
「そうね…」
社交界での回りくどい言い方よりは直球で聞くことを好まれるお義母様にそのまま聞けば何かを思案するように長い指先が頬を撫で首を傾ける。これは考えているのではなく、面白いことを企んでいる時のしぐさだと長い付き合いの中で知っていた
確実にミーティのことを知っているようだ。実母だからといえばそれまでだがこの様子からでは私の状況や近況の代替を把握しているに違いない
「最近のあの子は私よりも愛しの方に夢中みたいなのよね。浮気者よね」
「愛しの方…?」
「えぇ。だから、とっても寂しいのよ?私」
先程の内容一部訂正
自分は遠回しに言われるのは好まれないが、自分は遠回しに伝えるのが好きな人なのだ
良い性格している
私よりも、や浮気者というのは置いといていいだろう。そもそもミーティには婚約者は居ないから浮気者に入らないし自分と比較していることも軽口の一つだろう
ここで確かな点はミーティが誰かに夢中になっているという点だ
「えぇ、それは寂しいですよね。代わりにはなりませんが私が通い詰めますね」
「あら。それはいいわ。面倒くさい」
「軽口言うなら最後まで付き合ってくださいよ…ところで、愛しの方って…?我が家を継ぐことになる婚約者はまだ決まっていなかったはずですが…」
「その点については本当に早く決まってほしいものだけどね。いえ、決まらなくて良かったのかしら?」
「決まらなくて良かった…?」
第二王子と婚約が確定しており王家に嫁ぐことが決まっているのが長女の私
妹であるミーティの役割は公爵家である我が家を継ぐ青年を捕まえることだ
だが、ここ数年ミーティと同年代の男性の中で条件に合う男性がいないことから本来はもう婚約者ができる年頃である彼女にはまだ婚約者がいない
同年代でいい条件の男性はいるものの、公爵家を継ぐとなるといろいろな能力が必要とされるが、そこが足りないものばかりなのだ。勿論こちらで教育すればいいのだが教育する下地が悪ければ我が家を継ぐことなどできはしない。父はあれでいて本当にやり手であり母たちは全員その道に特化している能力値が高いものたちなのだ
そろそろ隣国まで候補を探さなければいけないと父が言っていたのを聞いたことはあるが、お義母様のこの物言いだとミーティには好いた人がいる、かのようだった
「あら、私はそう言っているのよ」
「心を読まないでください、お義母様」
「これは失礼。でも、私としては頑張っているなら応援したくなっちゃうわよ。問題解決するもの」
思ってもいない謝罪をして切れ長の眼差しでこちらを見据えるお義母様の顔はこれ以上の情報を与えないといった表情がうかがえる
ここからは自分で考えろというのだ
逆に考えると自分が考えるべき案件、私が判断するだけの情報が全て整っており思いつくだけでいいといわれている
最近ミーティが無視し始めたことより前に変わったこと
それは、恐らくだが私の前世の記憶が蘇ったことと…婚約者であるロイが私の屋敷に定期的に通うようになったことだろう。定期的にあっているとはいえ王族を呼び出すわけにもいかないためいつも私が王家に足を運んでいたが最近は頭を打ったこともありロイのほうから来てくれていたのだ
問題が解決する。それは恐らく長らく問題だったミーティの婚約者が居ない問題
その二つから導き出される結論は…
「……私を修道院にでも入れるおつもりですか?」
「そんなことしないわよ。それ以外に方法はあるでしょうね」
「…わかりました」
言外に正解だといわれる
愛しの方は恐らくロイ様のことだ。最近になって屋敷に着始めたロイ様のことをミーティは好きになってしまったのだろう。ロイ様が私のもとに来なくなったのは恐らくミーティの仕業か…ロイ様の心変わり
必要な礼をしてその場を立ち去る
ニヤニヤと面白そうな顔をしているお義母様の顔が今日はなんだか憎たらしく見えた
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