第9話 お友達とのお茶会
あれから何度か送っている招待状や手紙の返事がロイから届かないままアイラ様のお茶会の日となった
緊張した面持ちで現れたアイラ様だったが、今日はアイラ様だけだと知ると仄かに頬を緩めてかわいらしい笑顔を浮かべる
「よかったです…あ、決して他の皆様が居ないほうがいいとかではなく…」
「えぇ、分かっていますよ。大勢は緊張してしまいますよね。私も実は大勢は得意ではないんです」
「え!レデアナ様もですか?」
「内緒ですよ?」
「えぇ、内緒です」
二人で指を立てあい静かに微笑みあう。最近ロイ様からも妹からも無視され続けた心が和らぐのを感じる
「それで、ご相談があるとのことでしたが…何かあったんですか?」
「それが…実は、我が家では…」
「……そんなことを」
「も、もちろん。悪い意味でとらえないで頂戴ね?私は別に…」
「いえ!わかっております!それなら、我が家秘伝の方法。筋肉トレーニングと、食事生活に関して伝授します。任せてください!」
筋肉トレーニングは騎士を輩出している一家のアイラ嬢にとってはある意味死活問題だ。そんな方法は教えられるかと怒ったり罰にするのはいかがなものかと嫌がる顔をされることも想定して何個か説得する言葉を考えてはきたものの嫌われるのが怖くてついどもってしまう私の手をアイラ嬢は強く握る
本来ならマナー違反ではあるもののここはオフの場。輝くような笑顔を浮かべてこちらを見る彼女の手を握り返してしまった
「まずはやっているトレーニングを教えていただいてもよろしいですか?私はですね…」
「えぇ、まずは散歩から初めてそのうち競歩にしていき最近は腹部とかを鍛えているのよ」
「それはいいですね。その動きは考えてきたことないです、我が家ではこの動きを取り入れてこの太ももを発達させています」
「そんな方法があるのですか?」
そのまま二人でああでもない、こうでもないと話し合いながらも筋トレについて話し合った。どうやら筋トレについてもこの世界の常識はやや違うらしく自分の知らない知識が何個かあり有意義な時間となった。アイラ嬢にとってもそれは同じらしく私たちが語り合い、一息つく頃には真上にあった太陽が陰に沈み始めていた
「あら、もうこんな時間」
「失礼しました。このような時間まで引き留めてしまって…」
「いえ、いいんですよ。私にとっても大変有意義な時間でした。早速腹筋とやらを取り入れて使ってみます」
「私のほうも是非取り入れさせていただきます」
「……では、名残り惜しいですがそろそろ失礼いたしますね」
「…えぇ。あ、あの!その、兄弟とか、いらっしゃいますか?」
ここからアイラ嬢の領地までは少し時間がかかってしまう。太陽の位置的にそのタイムリミットはややオーバーしているだろう。無理をさせてはいけないと思いながらもこの楽しい時間を少しでも長引かせようとしたのか、もう限界だったのか。私の口からついて出たのは妹のことだ
私はそのまま妹に無視される話を口から零すと最初は柔らかい顔だったアイラ嬢は眉間にしわを寄せ考え込んだ後眉を下げて見せる
「申し訳ありません。生憎私は一人っ子でして…婿養子をとって私が我が家を相続する予定なのです。兄弟の関係は聊かわかりかねます」
「そう、ですよね…無理を言ってしまい申し訳ありません」
「いえ、差し支えなければ…兄がいる方の話を聞いてみましょうか?」
「兄、ですか?」
「えぇ、私の婚約者のラリアというものがおりますのでその方を交えてお茶会はどうですか?」
「そうですね…お願いしたいです」
「えぇ、もちろん!今度お連れしますね」
ラリア・ローサイト
アイラ嬢の隣の領地を治めている一家の次男坊でありアイラ嬢の幼馴染のはずだ。下の者の気持ちを一度話を聞いてみるのも悪くないだろう
二人で微笑みあい次の約束を交わした
ロイ様のことはなぜか言えなかった
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