第8話 仲直り大作戦
正直今までの自分だったらどうしたらいいかわからず放置していただろうと思う
それこそ箱入り娘らしくマナーをきちんと学んでいる私たち姉妹は今まで喧嘩らしい喧嘩はしたことなかった
仲がいいわけでもないが、無視したり罵倒しあうほど仲が悪いわけでもない
それが私と妹との関係性だった
「あら、ミーティ偶然ね。お茶でもどうかしら?」
「………」
「あら、ミーティも夕食を食べに来たの。隣に座ってもいいかしら」
「………」
「あら、ミーティ」
「………」
「取り付く島もないとはこのことね」
「お嬢様ってたまに意味の分からないことしますよね」
「黙りなさい。給料天引きするわよ」
「それは勘弁、美味しい紅茶でご容赦を」
仲直りしようとミーティに話しかけること数百回全てガン無視されて今になる
誘いがうまくいけばミーティと飲もうと思って用意させておいたお茶のセットを前に項垂れる私に軽口をたたくレーライがお茶を入れる
全くもって不服なことだがレーライのお茶はどのメイドが入れるよりも味と匂いがいいのだ。何故かと聞いたら愛情とかふざけたことを言ってくるから腹筋100回命じたこともある
「はぁ、椅子に座って話し相手にでもなってよ。レーライ」
「いいですよ。椅子には座りませんけどね」
「…貴方、ふざけたことは言うけど一線は越えないわよね」
「公爵家のものですから」
ここでお嬢様の使用人だとも言わない、昔父が言っていた主を見極めるタイプの使用人はいい使用人だと。許可しても雇っているものと同じ席には座らない彼はきちんと線引きできる彼はきっといい使用人に分類されるのだろう
「レーライは兄弟がいたわよね。喧嘩したときどうしているの」
「お嬢様たちは喧嘩以前の問題なように感じますが…ひぇ、言いますって~」
昔の記憶をたどるとレーライは幼い弟や妹の生活費を稼ぐためにここで働いているのだと聞いたことがある。仲直り方法を聞こうと思って話を向けると茶化しながらも真剣に考えてくれているのか顎に手を当ててうなって見せた
「そうですね、やっぱり相手の好きなものを用意することですかね。うちのは単純なので好きなものを夕食に出してさえやれば一発で機嫌が直っていました」
「好きなもの、かぁ」
「それこそ料理人とかミーティ様の世話人に聞けば一発じゃないですか?第一平民と貴族では関わり方も違うでしょう」
「違わ、ないでしょう」
私はミーティの好きなものを知らない
昔は遊んだ記憶がある、こともない。貴族らしくあれと昔から教育を受けてきた私の時間はマナーや政治、社交を学ぶことで精一杯で妹と遊ぶということすら考えつかなかった。知識やマナーが身につくことがそれだけうれしかったしそれが苦に思ったこともない
むしろ普通だとすら思っていたが前世の私はそんなこと気にせずに遊びまわっていたからきっと私のお義母様たちの教育方針なのだろう。もしかしたら、この世界の教育方針がそうなのかもしれないが生憎そのようなことを聞ける間柄の友人はいない
それこそレーライが提案してくれたような手段を用いてミーティの好きなものを用意することならできるだろうが案を出してくれたのに申し訳ないがそれが仲直りに繋がるとは到底思えなかった。レーライの表情からみて本人も仲直りに繋がるとは思っていないのだろうことは伺える
不自由さは感じていなかったが自由な時間がなかった過去とは違い、ある程度の教養と社交性を身につけた今は使用人たちに罰と称してトレーニングさせる時間もロイと会話する時間もあるのに妹との会話の糸口が全くつかめない
因みに最近では罰を受けると体の動きがよくなると噂になっており、女性メイドたちを中心に罰ではないのにトレーニングを受ける人が増えていった。そのメイドたち目当てに男たちもトレーニングし始めるものだからどの世界も女性に惹かれる男たちは多い。ただ、最近トレーニングをするものが増えだした分絞ってきた彼らの体を一段回上げるトレーニング方法が思いつかないのが悩みだ。私が剣を持って直接鍛えるわけにもいかないだろう
「そういえば、それこそロイ様は最近いらっしゃいませんね」
「うっ」
「なんですか、その痛いところを突かれたみたいな声は」
「まさしくその通りよ。なんでお嬢様の痛いところを的確についてくるの?」
「いやぁ、知りませんでしたよ~。すみませ~ん」
「思ってもないでしょう」
「…いや、でも。本当に。一時は毎日でも通ってやるとばかりにいたロイ様がいらっしゃらなくなって数週間立ちませんか?喧嘩でも?」
「…喧嘩はしてないわ。ただ、招待状は送っているのだけど返事がないの。城に私が向かうのはまだ反対されているから。どこかの誰かのせいで」
「う、次は俺の痛いところついてきましたね!?」
「お返しよ」
淹れてもらった紅茶を飲みながらも自然とため息を吐く
妹との仲直りもしたいと思っている懸念事項だが、正直それだけを必死になっているのは最近ロイに避けられている気がする現実逃避もある。一時は毎日来ようとしていたロイを説き伏せて1週間に1度にしてもらったものの。最近はそれすらない
彼に限って浮気だのなんだのはないと思うが、お茶会の招待状を送っても行けないとお詫びの品を送ることもなければ返事すらない
それこそこの問題を全て相談になってくれる友人がいれば…
と、そこで一人の令嬢が頭に浮かぶ
「便箋を持ってきて」
「ロイ様にまたお茶会の招待状ですか?それとも、ミーティ様?」
「いいえ、どちらでもないわ」
「え?」
「その他に送る相手いないだろうって顔やめなさい」
「アイラ様に送るのよ」
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