第2話 ダイエット計画始動
「レデアナ、目覚めたのかい?」
「あぁ!本当に良かった!」
「おっと」
自分が気絶した原因について婚約者であるロイに聞きつつしばらくたった後。ダイエットについて提案しようと口を開いたその時、扉の開く音がしてそんな声が部屋に響き渡った
目線を向けると両開きの扉でギリギリ通れるサイズの肉だるまが一つ、いや。父親とその後ろに長身でスレンダーな身体の魅力を余すことなく伝えるストレートなドレスを身にまとった、気が強そうなつり目がちの瞳を潤ませた母親が立っていた
彼らは、というより母は父を押しのけてそのまま私に抱き着き。父は一歩歩くたびに息を切らしながらも部屋に入ってくる
「レディ、大丈夫?貴方が気絶して帰ってきたときは息が止まるかと思ったのよ?」
「はい、お母さま。心配をかけて申し訳ありません。レデアナは無事ですわ」
「それならよかったわ。何かあったらすぐに言うのよ?」
「えぇ。お母さまに一番に知らせますね」
私の言葉に満足したようににこりと微笑む姿は気が強そうな外見からは想像もつかないほど優しげな印象を与える
浮気や複数人交際がステータスとも言えるこの国の価値観同様私の母は三人いる。そのうちの産みの親である第三夫人が目の前の母だ。一番目に迎えられた妻ではあるが、その身分が平民だったため順位が一番下の第三夫人として迎えられた母だが、中々の強かさを持っておりこうして長女の私を産んで立場を明確にしている。私自身そんな強さに憧れて将来複数人いる妻の一番を勝ち取るために様々な教育を進んで受けてきた、今は複数人妻を持つ旦那はいらないと思い始めているが、母に憧れる気持ちは変わらない
ちなみに、第一夫人は伯爵家の次女で穏やかな淑やかさをもつ女性で私のマナーの先生、第二夫人は辺境伯の従妹で私の勉学の先生でもあるほど家族仲は良好であり、第二夫人の娘…つまり、腹違いの妹との仲も良好とはいいがたいが憎しみあっているとかでもない。仲が良いことだけが家族の関係ではないと思っている
「レディ、このわからずやにいってくださいな。このわからずや、レディが気絶した責任を取らせて首にするといっているのよ」
「そ、それはだな。当然だろ、かわいいレデアナをこんな目に合わせたのだぞ」
「え、それはやりす」
「それは勿論ですね。物理的な意味でもいいと思います」
ちょっと待ってくれ
母が父のやろうとしていることを告げ口するかのように私に伝えてきた。その内容は馬車をひいていた新人使用人を首にしようとしているというものだった。愛する娘とはいえ頭を打ったくらいで首にするのはやりすぎだ、確か今日の馬車番は新人であったし仕方がないととりなそうとした時に横から聞こえる声に思わず動きが止まり鈍い動きでそちらのほうを見る
小肉だるま、もとい王子であるルイが恐らく笑顔を(もちろん顔も体系と同じように膨れているから表情は分かりにくい)浮かべこちらを見ていた
「どうしたの、レデアナ。もしかして、気分悪い?」
「違う、そうじゃない」
違う、そうじゃない
思わず口からも思考からも突っ込みを入れてしまった
第二といえど王子の発言は重い。自分の味方が増えたと思ったのか周囲にキラキラを零し始めた父がにこやか(これも恐らくがつく、顔はもうわからないため声色だ。声色も、吐息が多すぎてふがふがと聞こえる)にさらに続ける
「そもそも、侯爵家の人間が下の者に安く見られたという事実がいかんのだ。わかってくれるだろう、レディ」
ふがふがと息を漏らしながらも知的な眼差しを(おそらく)向けてくる父
要はプライドの問題なのだ
父はこの世界の住民としてやり手で魅力的な人間だ。
この世界は3人夫人を持つことが当たり前であり、その全員に平等に愛を捧げられる人間が魅力的な人間性とされる。もちろんそれは娘、息子にも適応されており。父はそれでいうとパーティに同行させるのは必ず母であったりと、母に一際愛情を注いでいるように思えるが他の妻や娘を蔑ろにしているわけではない。母はその道の分野。つまり、社交が大得意なのだ。母を重宝して優遇しているがお渡り…夜についても社交の話し合いを抜けば恐らく三人とも同じくらいの回数だろう。優遇を受けた覚えはあるが愛情の偏りを見たことは一度もない。勿論社交や連れまわすのが母の役目なら第一夫人は家の実権を握っているし、第二夫人は家の財布を握っており役目がそれぞれある。
やり手であるというのも婦人たちをうまく使っていることも勿論のこと、今言われた下に安くみられることは許されないもそうだ。一度の失敗、されど下の者の口は軽い。あの家のお嬢様に怪我をさせたのにお咎めがなかったとあればこれから先仕えてくれるものたちがその認識を持ってもおかしくないだろう。厳しいところを示すのは上のものとしてある程度必要な処置だ。今までの私だったら起床したばかりの混乱と部屋に父や母を来させてしまったことを重く考え自分の軽率な行いを反省する意味でも侯爵家の娘足らんとして父の言葉に従って処置を下しただろう
ただ、一つだけ父が見逃していることがある。それは母がここで止めているという点だ。父が母を重宝している理由として社交性のほかに必要な時に切り捨てられる思考を持っているという点がある。蝶や花のように育てられたほかの母たちにはできない打算的な付き合いがきちんとできるのだ。ここで母がこんなにも大反対しているということは、それ相応の理由がある
「…はい、理解しておりますわ。しかしながら、お父様。そう処罰ばかりしていては嫁入り前の身。評判が気になります」
「評判なんか、気にしなくていいのに…」
「いいえ。ロイ様の立派な妻であるためにもそのような処置はできません」
「では、どうするというのだ?」
「罰としてトレーニングを実施します」
「「「とれーにんぐ?」」」
柔らかい笑みで処罰を求める王子と冷静な瞳でこちらを見ていた父、慎重に見定めていた母の顔が聞きなれない単語を聞いて一気に呆然とする
そう、筋肉はすべてを解決するのだ!
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