第2話 危険な救助活動
「
今回もワープカタパルトでの発艦だ。距離は二光年ちょっとで比較的近距離なのだが、後席にはルーが座っている……のだ。
発艦時の強烈なGに耐えたその後はワープ空間へと突入している。コクピット内はキラキラと輝く虹色の光に包まれていた。
「ルー。大丈夫か? かなり強いGがかかったと思うが?」
そう。普通の中学生だったら失神しているような衝撃だ。
「大丈夫だって。ルーは宇宙で生活してたんだよ。戦闘機に乗るくらいはへっちゃら」
そういう事らしい。
それはそうと、何故、妹のルーが後席に座っているのだろうか?
先史文明の意識体が何か小細工を弄したとしても、中学生が戦闘機の後席に居座って出撃するなんてことは有り得ない。
しかも、俺の機体は単座のマークⅠだったのに、いつの間に複座のマークⅡへと機種変更されていたのだ。しかし、機体搭載のAIは前の機体の
「AHAL、状況を」
「スクランブル機と敵性勢力が接触し戦闘状態となりました。スクランブル機二機は破壊されパイロットは脱出しております。当機の任務はそのパイロット二名の救助となっております」
「機体の方は?」
「原型を留めているなら回収すべきですが、恐らく回収不能」
「なるほど」
「前線は一光秒ほど押し込まれています」
ブリーフィングルームで確認した時より状況は悪化しているらしい。スクランブルで二機飛んだ後に戦闘機二個小隊が発艦している。敵の先遣隊との小競合い状態か。その前線を飛び越えて後方に回る危険な任務だ。護衛の戦闘機は無し。敵と遭遇した場合、自力で切り抜けなくてはいけない。
「ルー。お前は何でついて来たんだ?」
「お兄ちゃんが大好きだからだよ」
「それは理由にはならない」
「私が邪魔なの?」
「いや、敵と遭遇したら危険だ。なぜ同乗の許可が出たのかは謎だが」
「だから、私は役に立つの。ルーが戦うとめちゃくちゃ強いんだよ」
そういう事らしい。光るクジラのような巨大な宇宙船、エノラで暮らしていた少女だ。しかも七次元宇宙なのだ。救助活動だけなら特に問題はない。救助ポットの機能だけで足りる。しかし、俺が心配なのはそこじゃない。押しかけ女房のようなこの妹を戦闘に巻き込むわけにはいかないじゃないか。
「ワープアウトします」
AHALの報告後、機体は通常空間へと回帰した。虹色に輝く高次元空間から漆黒の三次元空間へと落下したような感覚がある。そして心理的に非常に物悲しく感じるのは不思議だ。
「お兄ちゃん。三時の方向に要救助者。距離は約200メートル。ぴったんこだよ」
AHALよりルーの報告が早い?
「失礼しました。近距離の為レーダーの死角でした。回収作業にはいります」
「やれ」
「了解」
光学カメラがパイロットを捉えた。生存信号は出ている。
「こちら誉005、英だ。大丈夫か?」
「戦闘群第二大隊の
「機体は?」
「爆散した。回収は不要だ」
「了解。救助ロボットを出す。指示に従え」
「了解した」
救助ポットは円筒形なのだが、全長が20メートルもある大きなものだ。収容できるのは最大五名で48時間の生存が可能。救助用のロボットが二体待機しており、要救助者を安全にポッド内へと誘導する。俺のやることは殆どない。
無骨な四本の腕を持つロボに抱えられて榊がポット内へと収納された。
「ルー。二人目は何処だ?」
「わからない」
何? 一人目をいとも簡単に発見したルーが分からないだと?
「距離は2万メートル。まだ機体に取り残されているようです」
「わかった」
俺はAHALの報告に頷き、機体を二人目の要救助者へと向けた。
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