第90話 100話 獣人の国2
100話 獣人の国2
新しい国が作られ、国王も決まった。
これまでふんぞり返っていた盗賊団には騎士団員として活躍してもらうことになる。
もちろん二度と人狼の者に対して横柄な態度は取れないとした。
あくまで国を守る騎士団員としての身分とする。
「今の国の人狼の人口はどれくらいなのかな?」
アヤカタに尋ねてみた。
おおよその人数を知りたかったからで、これから増やす目安になるから。
「約200人は居ると思う。それに騎士団員を合わせると300人くらいかな。国と言ってもまだまだ小国ですね」
「これから増やせばいいことだよ。焦る必要はないです、食料品はどうしてる」
「町の外れで田畑があり主に人狼の者が農作業を行っておりました。引き続き農作業は続けていきますが、売り上げのほとんどは盗賊団の利益になっていました。それはどうしましょうか」
自分では何もせずに売上から天引きして楽して利益を得ていたのだった。
それはもう必要はない。
「全て国の為に使ってください。国が繁栄すれば生活も良くなりますから。それと今まで盗賊団だった人たちは護衛の騎士団にしましょう。普段は迷宮に行かせてもいいですし、土木作業員や他の作業をさせても構いません」
「人口が増えれば人手も要りますから働いてもらいます。ただ団員達がすぐに私の命令に従ってくれるかしら、少し心配ではあります」
「問題ないです、トカチにはシッカリと言っておきますから。トカチに逆らう者はいないでしょう」
俺はトカチを見て視線を送ると、理解した様子である。
「この国を守ればいいのですね。騎士団長として人狼の民は私が保証しますわ。もし敵が来ようがその時は皆殺しにでもしてあげますから。進君の言いつけなら必ず守るわ」
トカチは俺にウインクをして嫁アピールをしてきた。
もう完全に嫁になりきっていた。
「そ、そ、それは安心です」
言われたアヤカタも申し分ない戦力に安心と言った。
半分怖かっていたのは仕方ないが。
国家の基礎はこれで築けた。
後は任せても大丈夫だと信じていくことにした。
「まさか人狼の国をつくるなんて、いつから考えてたんだ」
チユが不思議そうに言ってきた。
「じ、実は今思い付いたんだよね」
本当にその場の発想であった。
「思い付きかいっ。軽いな進の発想は。でも……ありがとうございます。牢獄に入った時はもう終わったと思ったわ。あの時、進が助けに来てくれた時は嬉しかった」
「当然のことのことさ。チユの胸を触れるのは俺だけにしたかったからさ」
「それなら今日はたっぷりと触られせてあげよう。今夜ね」
胸を両腕で真ん中に寄せてみせた。
すると胸は盛り上がってこぼれ落ちそうになり、俺の視線は釘付けになったのは言うまでもない。
「何、今夜って。進君の嫁は私なのよ。進君がチユの胸に興味を抱くことなんてあり得ないのよ」
トカチがチユと激突した。
どうやらトカチは嫁として俺が他の女に気を許すのを認めない方向らしいのが、今の発言で判明した。
「そうかしら……。進は触りたくないの?」
チユは持ち上げるだけでなく、左右に揺すりだした。
ここは当然のことトカチを立ててやりたい。
まぁ、一応嫁なのでと思っていたが、そうもいかない。
何てことをするのだチユ。
そんなに揺すったら俺の視線は、定まらなくなる。
「さ、さ、さ、触らない……」
「それでこそ進君」
「ふん!」
チユは俺が断ったのでふくれっ面になった。
ただ危なかったのは、あと少しで触っていたところだった。
そのことはトカチにはバレていなくホッとした。
しかし問題は全て解決したわけではなかった。
あと一つある。
それを俺は忘れかけていたが、気を許すのを止め無ければならない。
絶対に逃がしてはならない者がいる。
「トカチにききたい。俺は実は家屋内でお前と騎士団長のナッツが話していたのを盗み聞きしてしまった。そこで100万を渡したよな」
「はい、渡したわ。アレは私が国王軍から見逃してもらい利益を上げていくための賄賂だった。つまりは私も国王軍から見逃してもらい、ナッツも国王には報告せずに100万を得て懐を肥やしていたのよ。それは国王の方も知らないはずよ。知られたら一大事になるのは間違いなし」
「ええええ!」
トカチが真実を伝えると離しを聞いていた者は全員が衝撃を受けたようだった。
誰もがナッツはクノの町を守る国王軍の騎士団長として尊敬されていたのだから。
「フフフ」
そこへ不敵な笑いがどこからともなく聞こえてきた。
「お前はナッツ!!」
その声の持ち主はナッツであった。
話を聞いていたのか知らぬが、タイミング良く話に入って現れた。
それは紛れもなく噂していたナッツ。
コチラから探す必要は無くなった。
この男を見逃しやしない。
捕らえて国王に身を預ける。
それがこの国の最初の仕事だ。
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