第14話 21話 回復薬

21話 回復薬


 小休憩を取る。


 ついでに、回復薬を飲もうかな。


 まだ持っていたので、アイテムボックスから取り出す。


 シュナリの口に合うかどうか。


 薬のような味だから、吐き出したりしたら大変ではある。


 独特の栄養ドリンク味は好きで俺は問題ないです。




「回復薬飲んでみな」




「ありがとうございます」




 俺から受け取ると、一気に飲んでしまう。


 大丈夫かな。




「味はどうだ」




「美味しいです。もっと飲みたいくらい」




「1本で十分効くから」




「そうします…」




 ちょっと残念そうにしてみせる。


 回復薬は問題なしと。


 体力を回復させたので、再び迷宮の探索に向かいます。


 直ぐに現れたのはスノーシュリンプ。


 しかも2匹いた。


 


「2匹だな」




「どうしますか」




 俺がオトリになり注意をひく作戦は使えそうにない。


 1匹にしか使えない策だった。


 どんどんと迫ってきやがる。


 考えてる余裕はない。


 シュナリだって2匹は無理だろう。


 2匹同時に倒していくか。


 1匹ずつ相手にするかを迷う。


 相手もやすやすと攻撃をさせてはくれないだろう。


 2匹同時に戦う他ない。




「俺は右、シュナリは左を殺れ」




「左ですね」




 シュナリは俺の言う通りに左のに向かっていく。


 右のは俺が相手になろう。


 スノーシュリンプも左右に分かれてきた。


 頭を一撃しに行く。


 やはりハサミで防いだ。


 これは予想通り。


 ここで試してみたいことがあった。


 ハサミで防ぎながらもう一本のハサミで攻撃してくる。


 この時に、俺が後退する。


 これは逃げてるだけで、勝ち目はないのでは。


 逃げずに、ハサミ攻撃を避ける。


 そこからもう一撃頭に突き刺す。


 これなら勝てるとみた。


 ハサミ攻撃がくる。


 逃げずに避けれるか。


 ここで決まる。


 ハサミが思ったより早い。


 このままだと当たる…。


 その時にハサミからかわせた。


 攻撃回避が発動したようだ。


 寸前で避けた俺は頭にイーグルソードを突き刺した。


 スノーシュリンプを倒した。




「危ねぇ」




 危なく殺られるところだった。


 スキルの攻撃回避が無ければ死んでたか?


 まぁ結果が良ければいい。


 シュナリはどうなったか。


 助けないとな。


 見ると頭を何度も突き刺していて、もはや倒すのは時間の問題。


 俺の手助けは不要でした。




「2匹でも倒せたな」




「倒せました。短剣ですと威力は弱いのがわかりますね。何度も攻撃する必要があります」


 


「でも速度のあるシュナリには接近向きでいいと思う。怪我はなかったか」




「大丈夫です。避けれない攻撃ではないです」




「決して無理な戦いはしないこと。シュナリに何かあったら困る」




「気を付けます」




 コクリと済みませんて感じに頷く。


 頭の耳が下に垂れて可愛らしい。


 今日は宿屋に帰ったらこの耳に触りたいです。


 柔らかそうだ。


 犬は飼っていたことがあるが、犬の耳に近い感触だろうか。


 帰るのが楽しみである。


 でももう少し辛抱しよう。


 目の前にいるのだけど…。


 ここは我慢して宿屋で触ろう。


 いや、やっぱり触りたいな。




「あのさ、その耳を触ってもいいかな」




「何か付いてましたか?」




「違うんだけど、どんな感触なのかと思って」




「ご主人様が触りたければ、いいですよ。でも同じ耳だと思うけどなぁ」




「触るぞ」




 シュナリは頭を俺の方に向けたので耳が近くに来る。


 先っぽの方を触ってみた。


 人の耳よりも大きい耳であり、毛が生えている。


 動物の耳よりは毛は少ないが、フサフサしてて触り心地がとても良い。




「フサフサしてて気持ちいいぞ」




「フサフサですか。獣人はたいてい毛が生えているから、あまり気にしたことなかった。気持ちいいって言われると照れちゃいます」




「もっと触ってやるぞ」




「ああ! くすぐったい。そんなに触ったら」




 可愛い声で言った。


 迷宮のフロアーに声は響いたので、俺まで照れてしまった。


 ここで魔物に襲われたら終わりだな。


 それでも止められないのだった。




「ここか」




「ああ! 耳がこんなにくすぐったいなんて初めて知りました。ご、ご主人様の耳も触ってみたいな」




「なにっ、俺のをか。よし触らせてやろう、ほれ触ってごらん」




 俺は耳をシュナリが届くように下げた。


 そっと大事な物を掴むようにして俺の耳を触る。


 確かにくすぐったい。




「くく、くすぐったいな」




「そうでしょう。もっと触って欲しいですか」




「頼む」




 俺は何をしてるのだろうか。


 こんな所で道草をくってる場合じゃないのに。


 だが止められないのが不思議であった。


 しばらくの間、二人で触りあった。


 意識を迷宮に向けて切り替えることに。




「そろそろ次の階層へ向かおうか」




「そうしましょう」




 2匹ともスノーシュリンプは戦いにくいな。


 まだ1階でこの感じ。


 2階以降はどうなるのか。


 スノーシュリンプの数も増えて遭遇することもありえる。


 無理は禁物だな。


 シュナリが手に入った今は、無理に進めるのはよそう。


 1階フロアのマップを描き足す。


 広さはムライ迷宮のフロアと同じとみていい。




「腹は減ってないか」




「町まで耐えられます。帰ったら食べたいですが…」




「もう少し頑張るんだ。そしたら腹いっぱい食べていいぞ」




「頑張りますっ!」




 俺に対面して両手を握ってみせた。


 シュナリなりのアピールなのか。


 ちょっと可愛らしい。


 可愛らしいというのも変だが可愛らしいのだから良いとしよう。


 本人は必死なのだから。


 さらにフロアの探索を続ける。


 途中魔物はスノーシュリンプを倒した。


 フロアを探索中にシュナリが立ち止まった。


 どうしたのか。


 魔物の臭いを察したのか、じっとしている。




「何かあったか」




「はい。かなり先に人がいます」




「冒険者か…何人くらいだ」




「5人です」




「5人…」




 俺の目には全く見えていないが、臭いってわかっちゃうのね。


 人数までわかるなんて鼻が良過ぎる。


 ここまでいいと、くさい臭いとか、どうするのかな。


 俺の何倍も良いわけだから、臭さも何倍にもなっちゃう。


 それはそれで困ると思う。


 数からして、まず冒険者だろう。


 しかも5人もいる。


 待ち伏せか…。


 相手にもよるが、奇襲されたら不利だな。


 数でも負けてるし。


 相手は俺達の存在に気付いているのかが重要です。




「コッチを気付いているのか、わかるか」




「じっとその場で立ったまま動きません」




「5人ともか」




「はい」




 立ち話でもしてんのか。


 気付いてなければ、引き返すのも有りだ。


 無理に会う必要もない。


 気付いてれば、待ち伏せの可能性がある。


 行くか…引き返すか。


 ムライ迷宮ではガイルがいた。


 エハロにも盗賊団がいてもおかしくはない。


 黒死蝶ならさらに厄介だ。


 それはここに居ても判断出来ない。


 やはり迷宮攻略はすんなりとはいかないようだ。


 悩んだ末に決めました。




「このまま行くぞ」




「行きます」




 シュナリは俺の意思に従った。


 引き返すのは簡単。


 でもいちいち引き返していたら、迷宮攻略なんて遠いから。


 手に届かないな。


 そう感じて進むのを選択しました。


 どう出るかは行ってからわかる。


 ゆっくりと足音を消して近づく。


 何も聞こえない。


 何も見えないぞ。


 シュナリが言うのだから信じよう。


 前方に突き当たりの壁が見えた。


 左に曲がれる道があるな。


 そこに潜んでいるのか。




「左に居そうか」




「すぐ左にいます」




 声もないところからして待ち伏せの可能性が高まった。


 面倒なことになったな。


 イーグルソードでいくか。


 いっそのことバジリスクを使うか…。


 使うなら曲がる前だ。


 曲がってから対面してからでは遅い。


 間に合わないだろう。


 魔力を使い果たしても命には変えられないしな。


 しかし敵かどうかもわからない相手にバジリスクは見せたくないのもある。


 見せるならその後に殺すことになるのが理由です。


 バジリスクだけは知られたくないんです。


 このままイーグルソードで進み突き当たりまで来た。


 シュナリに曲がる合図を送る。


 シュナリは理解して頷く。


 一呼吸して落ち着かせる。


 左に曲がった……。


 そこにはシュナリの言う通りに5人冒険者が居た。


 全員男だ。


 俺はイーグルソードに手を置いた。


 くるか…くるなら来い!

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