第5話 豚骨の味
僕の姉、現在高校三年生で名前は
「積麦遅いでござるよー。とても暇だったでござる。」
「・・・そうかい。ていうか一人旅行は楽しかったか?昨日から始業式の姉貴。」
少し嫌みたらしく言ってみる。姉は昨日から学校が始まっている。でも今日を含めて一週間の間、一人旅行をしていた。
「最高でござった。あの開放感は実質、空を飛んでるようなものでござったよ。」
「そうかい。というかその語尾やめろ。なんだござるって侍かよ。」
「おぉ、いいとこに気づいたねさすが我が弟。ちょっと目を閉じてて。」
「えぇ、なんで。」
「いいから閉じる!」
閉じないと玄関から動けないので仕方なく閉じる。そしたら、勢いよく階段を上がっていく音がする。部屋のドアを開けて、また勢いよく降りて来る。・・・なんか嫌な予感が。
「どりゃあーー!めーん!」
痛っ!なんか叩かれた。なんでいきなり叩かれるんだ!
目を開けると姉の手には木刀があった。
「なにこれ?」
「弟にお土産。あげる。」
「いらねー!」
「えっ、いらないの?小学校の時欲しいって言ってなかった?」
「いつの話だよ・・・。」
「まぁせっかく買ってきたからもらって。あんた叩いたら、旅行中のストレス発散できたわ。本当は一日中付き合わせてやるつもりだったけどこれで許してあげる。」
・・・やっぱり早く帰ってこなくて正解だった。一日中なんて心が持たない。姉は満足げに自分の部屋に戻って行った。その後僕は手を洗い、ご飯を食べ、風呂に入り寝た。木刀は一応、自分の部屋に置いておく事にした。
次の日の朝、草深さんにお薦めされた本を読むため早めに学校に行く事にした。教室に着くと相変わらず誰もいない。草深さんがまだいない事を少し残念に思いながらも、自分の席で本を読め始める事にする。
本を読んでから十五分ぐらいたった時、草深さんが教室に入ってきた。
「おはよう草深さん。」
「おはようございます。その本読み終わりましたか?」
「あぁごめんまだ全然読めてない。」
「急がせてしまってすみません。自分のペースで読んでください。」
そう言うと草深さんも本を読み始めた。今度からこの時間は草深さんと本を読む時間になるかもしれない。それも悪くないな。
朝の時間が終わって授業が始まった。高校初授業で心配だったが、今のところは大丈夫そうな内容だった。午前の授業も終わり昼休みになる。これからは午後もあるのか、ちょっと忙しくなるな。・・・今昼休みか。隣にいる草深さんを見る。昼食に誘いたいが口に出すとなると緊張する。でもいつまでもくよくよしてられないので勇気を出して誘ってみる事にする。
「ねぇ草深さん一緒に学食に行かない?」
「いいですよ。」
すんなりと誘うことができた。
「では、行きましょうか。」
「そうだね。」
教室を出て学食に向かう。
「草深さんは何食べるの?」
「まだ決めてません。」
「そっか、僕も決めてない。」
「・・・」
会話は続くことはなく学食に着いた。まずは購買を確認するがもう売り切れていた。早すぎる。草深さんを見ると何も言わずに食券機に向かっていたので慌ててついていく。
「どれにするの?」
「豚骨ラーメンにします。」
「じゃー僕も。」
草深さんが購入した後、僕も購入する。ラーメンの食券を持って食堂のおばさんの所に向かう。まず草深さんが頼む。
「豚骨ラーメン大盛りで、チャーシューは小さいやつが良くて、紅しょうがときくらげは少し多めがいいです。」
「はいおまち。」
・・・なんだ、なんだ、なんだ!すごい!常連みたいでかっこいい!
ラーメンを頼んでいる時の草深さんが輝いているように見えた。僕もできるかな。
「豚骨ラーメン大盛りで、チャーシューも大きいやつお願いします!」
「はい、プラス150円ね。」
草深さんの前の席に座って考える。・・・なぜだ、なぜ金を取られるのだ。
「草深さんはお金払わなくて良かったのになんで僕は払わないといけないの?」
「それが普通のことだからです。」
「どう言うこと!?差別されたのに普通なんてひどいよ。」
いくら草深さんでも言っていいことと悪いことがある。
「そうじゃありません。ここの学食はトッピング無料券を見せるとオプションが無料でつけられます。」
「トッピング無料券って何?」
「ここの学食はトッピング無料券を1500円で売っているんです。配布物にも宣伝のチラシが入っていましたし、初日は学食の前で宣伝用の紙が貼っていました。後、学校のホームページにも書いてあります。」
そう言って、スマホでホームページを見せてくれる。
「本当だ。」
なんだ、ただの情報不足か。少しの間空を仰ぐ。
豚骨は染みるほど美味しかった。
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