第2話 放課後の偶然

 学校初日の授業は午前中に終わった。授業といっても先生の話を聞いたり、配布物が配られるだけで授業らしいことはまだしていないけれど。時計を見てみるとちょうど十二時になった所だった。とりあえず昼食にしよう。今日は学食がやっていない事を考慮してくれた母がお弁当を作ってくれた。その予感は見事に当たった様でクラスの学生たちが学食が開いていなくて残念的な事を話している。・・・ちょっと待って。話しているという事は既に友達になっているという事か?そうだとするとまずい。出遅れたというか周りが早すぎる。そもそも友達って初日からできるものなのか?だが友達がいたことがないので分からなかった。このままだとまたぼっちの学園生活を過ごすことになってしまう。どうしようかと悩んでいると一つの案が湧いてきた。単純なことだが部活動見学に行くというものだ。部活は友達を作る絶好の場所のはず。今日配布された予定表を見てみると、どうやら今日から部活動見学・体験ができるらしい。よしそうと決まれば行動だ。・・・まぁでもとりあえずお弁当を食べよう。・・・ふふ、どこから行こうか。


 まず始めにeスポーツ部に行ってみることにした。ゲームは毎日やっているから結構強い方なのではないかと少し自信があったが、先輩相手に一回も勝つことはできなかった。少し落ち込んでいると後ろが何やらざわつき始めた。気になって振り返るとそこには草深さんの姿があった。ゲームとか興味がないと思っていたからこの部活に来ていたのが意外だった。eスポーツ部の先輩たちが驚きながら話している。

 「あの子やばいよこの部活で最強のあいつを倒しちまった。」

 「まじかよあいつがやられるなんて、こりゃ新たな伝説の始まりか?」

 どうやら草深さんがこの部活の最強を倒したらしい。道場破りかな。ざわついている周りを無視して草深さんは部室を後にした。僕もゲームは楽しんでやるのが一番だと自分に言い聞かせて違う部室に行くことにした。


 次は吹奏楽部に行ってみることにした。最初は楽器の紹介を含めて練習風景を見学することになった。女子が多いなぁ…。この時点で全然上手くやっていける気がしなかった。でもせっかくなので楽器を体験させてもらうことにした。結果、全然音が出なかった。少しは出てくれよ、くそぉ。吹奏楽部は諦めて他の部活に行こうとした時ざわめきが起こった。もしやと思ってその場所に行ってみるとざわめきの中心に草深さんがいた。吹奏楽部の先輩が草深さんに話しかけている。

 「君すごいね、まさかここまで吹けるなんて!中学の時に吹奏楽やってたの?」

 「やってました。」

 「えっすごい、絶対才能あるよ。吹奏楽に入らない?」

 「考えときます。」

 そう言うとすっとその場を後にしていく。去り方がかっこいいな。僕も自分の才能に見切りをつけて違う部活に行くことにした。


 この後も行く先々の部活で草深さんに会った。どの場所でもざわめきを起こしては去って行った。


 いつの間にかもう夕暮れ時、気づけば僕は屋上にいた。沈んでいく夕日を見ながら今日一日の事を振り返る。至る所で草深さんに会うなんてすごい偶然だったな。それにしても草深さん何でもできるな。自己紹介の時は謎に親近感が湧いたのに、また少し遠い存在になってしまった。なんか悔しいな。・・・よし、自分の中でのあだ名をつけよう。まずはイメージから考えてみる。何でもできることとクールであること、みんなから注目されること。これらから導かれるのは・・・女王かな?あともう一捻り欲しい。他に印象深いものは・・・枝豆。その瞬間に何かが閃いた。枝豆女王。僕の中で彼女のあだ名が決定した瞬間だった。


 帰宅後・・・

そういえば友達作る目標のこと忘れてた!

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