秘密は様々あるもの

桜桃

第1話

 私には、何でも言う事を聞いてくれる下僕が存在する。


 普段はおどおどしている黒髪の同級生。

 陰キャ丸出しの生徒、名前は黒川静稀くろかわしずき


 黒髪に眼鏡と。

 いじめられっ子みたいな見た目をしているその人に、私は出会った時にすぐ狙いを定め、下僕にした。


 まぁ、実際は虐められてはいなかったし、一人で過ごすことが多かっただけらしい。

 だから声をかけやすかったし、簡単に下僕もゲット出来た!!


 ふふん、運が良かったというのもあるんだけどね!!

 どっちにしろ、私は黒川を自分の物に出来た。ぐふふ、嬉しいなぁ~。


「ふふふっ、これで私の学校生活は穏やかよ」

「何が穏やかよ。黒川君、可哀想に。あんたみたいな変人に捕まってさぁ~」


 私が屋上でお弁当を広げ妄想している隣で、中学の時から友人である亜里沙ありさがため息をつきそんなことを言ってきた。


「つーか、美由紀みゆき。あんた、なんで黒川君を狙ったの? というか、下僕って、必要?」


「下僕が必要かなんて、よくぞ聞いてくれっ――――」


「やっぱりめんどくさそうになるからいいわ。いただきまーす」


 私の事を無視して、亜里沙がお弁当を頬張り始めた。


 聞いたのはそっちなのに! なんなのよ!!


 はぁ、時間もないし、私もお弁当を食べるかぁ。

 もう、亜里沙なんて知らない!!


「そういや、今日も放課後、黒川君と帰るの?」


「ん? うん。そのつもりだよ、なんで?」


「いや、だって。正直、黒川君は見た目からして陰キャじゃん?」


「まぁ、だから狙ったわけだし」


「でも、貴方は完璧陽キャじゃん?」


 ――――ん? そうかなぁ。


 私は確かに髪は明るい方。

 学校の規定ギリギリだし、ナチュラルメイクも欠かさない。


 耳にはピアス穴は開いているし、舌にも開けたいとか思ってる。


 ……………………確かに、見た目だけなら陽キャかもしれない。


「でも、陰キャとか陽キャとか関係なくない? 私は私が黒川と一緒に居たいだけ」


「あんたがいいならいいけどさぁ」


 ん~? 亜里沙の言いたいことがわからない。

 けど、まぁ、いいか。


 このままいつものように雑談を楽しんでいると、休みは終わった。


 放課後、また黒川に何をお願いしようかなぁ~


 ※


「おい、下僕。今日も私の家に来い」


「わ、かりました」


 私と下僕である黒川は、クラスが違う。


 私の方の担任は、無駄な話を一切しないでSHRを終らせるから、いつも私が下僕を迎えに行ってる。


 これに対しても亜里沙は何か言いたげな目を向けてきていたが、どうでもいい。

 私は早く黒川と帰りたい。


 早く、放課後を満喫したい。


「早く帰るよ!!! 私の下僕!!」


「は、はい。――――あ、待ってくださいよ、美由紀さん!!」


 鞄を慌てて持ち、私へと駆け寄ってくる下僕。

 ふふ、ここまでは調教してやったのだ。


 …………ただ、私の傍からできるだけ離れるなと言ったらこうなっただけなんだけど。


 そのまま二人で帰り、私の家に。


 私の家は両親共働きで、普段は誰もいない家の中。

 でも、最近は黒川が来てくれるから寂しくない。


 さて、ここからは、私の秘密時間よ、ふふっ。


「さぁ、脱ぐのだ!!! !!!」


「……………………それ、絶対に以外の前では言わない方がいいわよ。普通に変態扱いされるから」


 ・・・・・・・・・。


 そ、そんなことないもん!!


「はぁ、わかりました。今日はどのような服がよろしいですか?」


「執事!!」


「男装しろと?」


「うん!!!」


「普段から男装しているのに…………」


「あれはなんか、違うじゃん」


「よくわかりませんが、わかりました。少々お待ちください」


「はーい!」


 これが本来の私達の関係。

 実は、黒川静稀って、男じゃなくて女なんだよね。

 私も最初はびっくりしちゃった。


 なんか、理由があるらしくて、周りにばれてはいけないらしい。

 だから、秘密にしてあげる代わりに、私の趣味であるコスプレに付き合ってもらっているの!  


 だって、静稀ちゃん!! ものすごくかわいいんだもん!!!


 これは、私と静稀ちゃんの秘密。

 誰にもばれてはいけない。私達だけの、ひ・み・つ!

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秘密は様々あるもの 桜桃 @sakurannbo

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