秘密の扉

@GPT00

秘密の扉

ある日の放課後、なぎは教室でいつものように一冊の本に夢中になっていた。そんな彼女の耳にどこからともなく歌声が聞こえたきたような気がした。誰かのスマホの音漏れかと思ったが、窓の外から聞こえてくるような気がして、窓から声の元を探してみると、どうやら屋上で誰かが歌っているような気がした。なぎは教室をでて屋上へ向かう。いつもは施錠されているはずの扉が少し開いていた。なぎはその秘密の扉を少し開けて耳を澄ませると、アルの歌声が優しく響き渡り、なぎはその歌に引き込まれていった。アルが一曲歌い終わると、なぎは扉をゆっくりと開けて拍手しながら屋上に入って行った。アルは驚いてなぎの方を見つめた。


「ねえ、アル。今の歌、すごく素敵だった」


拍手をしてなぎは素直な感想を言う。


「なぎ、聞こえちゃったんだ。恥ずかしいな

でも褒めてくれてありがとう」


なぎはアルの隣まで行くと、アルの腕に自分の腕を絡ませた。


「一人で歌うのが好きなんだね。こんなに素敵な歌、一人で歌ってるなんでもったいないよ」


アルは照れくさそうに笑顔で答える。


「あんまり人に聞かせるような歌じゃないし。いろんな理由があってね。でも、私の心の隙間を埋めてくれるのが歌なんだ。だからちょっとだけ歌ってみたくなるんだよね」


「なるほど。歌が君の心の友達なんだね。」


アルは嬉しそうにうなずき、一瞬の静寂が流れた後、意外な提案をする。


「なぎも歌ってみない?心の中の気持ちを歌にしてみたらどうだろう?」


「私?でも、歌なんて全然……」


「大丈夫。なぎならきっと素敵な歌が歌えるよ。」


なぎは一瞬ためらった後、アルの誘いに乗ることを決意した。夕暮れ時、学校の屋上に差し込む暖かな光。アルはなぎと手を繋いだまま歌い出した。


「秘密の扉が開く 鍵はきっとこの中に」


歌声は夕陽に向かって響きわたり、まわりの空気が不思議なほどに満たされていく。


「歌詞、すごく素敵だね。これってアルが作ったの?」


「そうだよ。これは私の心の中にある秘密を歌にしたんだ」


なぎは歌詞に込められた感情を感じながら、興奮気味に言う。


「それなら、私も続けてもいいかな?」


「もちろんだよ」


「遠くの空に広がる 夢を抱いて歩き出そう」


アルはなぎの歌声に感動し、彼女の表情も見とれていた。


「なぎ、君の歌、すごく素敵だよ。心に響いてくる」


なぎは少し照れくさそうに笑う。

二人は今の気持ちを歌詞にしながら、その言葉に乗せられているリズムで歌い合わせる。


「ありがとう、アル。すっごく楽しかった。歌なんて作れると思ってなかったけど、アルと一緒だとなんかすっごく心から言葉が湧いてきたような気がした」


「私もだよ。なぎと一緒に歌えてとっても嬉しかった」


そのとき、なぎの心の扉が一気に開いたような気がした。アルとの交流が新たな扉を切り開いていくのを感じた瞬間だった。


「なぎ、君と一緒にいると、心が軽くなった気がする」


アルがそう言うと、なぎは思わず笑みを浮かべる。


「私もだよ。これからもよろしくね、アル」


二人の歌声は夕焼け空に響き渡り、二人の秘密の扉を開けるような新たな友情が生まれていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

秘密の扉 @GPT00

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ