第2話「彼女はサイコキラー」
熊の着ぐるみの胴体から、少女が這い出てきた。私には、何もかも理解できない。何で、背中からジェットエンジンが出てくるの。何でメカアームと武器が出てくるの。
そして何で、こいつに追いかけられなきゃいけないの。
…まぁ、そんなこと考えるだけ無駄なのは当然のこと。
今のところ彼女は、倒れ込んだままなので、逃げられるならば今のうちに逃げた方が無難だ。
私は右足を差し出す。しかし、何してんの、私の首。あの娘に目線を合わせたまま、動かないじゃない。あんなヤツ、気にする必要なんてないのよ。さっさと左足を地面から離さないと。
「待って…」
「待つわけがないでしょう!?このまま失礼させてもらうわ」
「あなた、私に釘付けだった。」
「違うわよ。そんなの着込んで、あんたどういうつもりよ?」
「私のこと、気になるんだ。そんなに私に興味持ってくれるなんて嬉しい。色々教えてあげる。」
知るか。
とばっかりに、私は奥の方へ走った。が。
「うわっ!!」
ガシッとまた何かに私の体を掴まれた。もう一体の熊。おそらくこれも着ぐるみで、ラジコン式だ。
少女がコントローラーを操作し、近くに運ばせた。
私の足は地面から離れ、もはや逃げることができないようになっていた。
「離しなさいよ!」
「離さない。あなたのこと、気に入った。」
少女は壊れた着ぐるみの中から這い出て、全体を表した。
身長は私と同じ程度で、多分年齢も私と近いんだろうか。所々を真っ赤な血で赤く染めた純白の白衣から、生臭い匂いが鼻を刺激する。服装はその服一枚だけで、滑らかなボディーラインがはっきりと見える。
少女は一歩ずつ私に近寄ってくると、両手のひらを私の頬に当て、顔を近づけてきた。
「私、あなたのこと、殺すの。」
直球にも程があるわ。
「私、あなたみたいなかわいい子が、痛みに悶えながら呻き声を上げる時の顔を見るのが好き。かわいい女の子の、綺麗で柔らかい肉を切り裂く音が好き。かわいい女の子の、綺麗な血を浴びるのが好き。バラバラにした女の子の死体に触れて、肌の感覚と香りに浸るのが…好き。」
何よ、こいつ。ガチでヤバい生き物じゃない。
「ねえ、あなたは、どんな叫び声を聞かせてくれるの?
爪を剥がした時。指を切り落とした時。目玉を抉り出した時。その痛みをあなたはどんな声で表してくれるのか、楽しみ。」
眼鏡の奥の
「それにあなた、いい身体付きしてる。このつるつるした肌の感触に、肉体の弾力。今までで一番の逸材ね。」
片手で私の太腿を撫でながら言う。そして、もう片方の手で私の胸(Fカップ)の片方に触る。
「ああっ/////!!」
「特にここ、すごい。最高の触り心地。」
「もう、なんてとこ触ってんのよっ!」
少女の右手の指が胸にめり込む。左手のひらで太腿を撫で回しながら、少女は体を近づける。その度少女の体温を感じやすくなる。
「…この体制じゃ、やりづらい。」
少女はリモコンを操作し、私を掴んでた着ぐるみをどかすと、仰向けに倒れさせた私の上に体重をかけた。
「うわっ!」
「こんな子、痛めつけるのは勿体無い。もうちょっと遊ばせてもらう。」
密着した少女の体温のせいで、私の体まで熱くなっていく。
「ちょっと、何するのよ!?」
「遊んであげるの、あなたの体で。」
太腿を触っていた片手を、突然パンツの中に入れだした。
「ひゃあっ!?」
「あなたのこと、気持ち良くしてあげる。」
こう言いながら、少女は指先を私の局所に伸ばす。処理のされていない乾いた黒い草叢を、掻き分けるようにして指を小刻みに動かす。
「ひゃっ、あぁっ」
その快感に私は悶える。
私だって一応は富裕層のいい所に生まれたお嬢様。一人でえっちな行為に及ぶことなどした試しがないし、そんなはしたないことをしていると知られたなら、人生は終わりも同然。
そんな経験すらない私に対して、この子はいきなりなんてことをするというの。
「ふふふ。可愛い声上げちゃって。」
恍惚の表情を浮かべながら、小さくて細い指先で私の股の線を優しく撫でる。
「下さなくていいの?」
少女は、私のパンツに手をかけながら言う。
「余計なお世話よ」
「脚の間、濡れちゃうよ」
迷惑そうに言い放った私に、心配でもしてるかのように、優しく言い放った。
こんなことしたら。ましてや女の子同士で。こんなのだめだって、分かっているのだけど、もう逃げられない。でも私は動かない。
そう。私はただ、彼女を欲していたのだ。
体が疼いてたまらない。ここは寒い。今は時針がどこを指すのかもわからない、夜の深淵だ。
今頼りになるのは、彼女の体温だけだ。こんなに気味悪くて、素性もよくわからない彼女の…ね。
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