第3話 足がくっせぇですわぁぁぁっ!

新卒採用がもうそろそろだなーという時期になると思い出す。自分の足が臭くて門税していた頃を。


あれは31歳だった。転職して出版社で働くことになった俺は、人生で初めて革靴をずっと履く生活になった。それまでスーツを着て働くことはあっても革靴をずっと履いて仕事をすることなんてなかったのだ。


そんな職場あるかい! と思うかもしれないが、結構ある。特に革靴よりも動きやすい靴が好まれる場所だ。僕の場合、農協だった。窓口にいると、金融業務をしながら肥料や米を運ぶ。革靴だと動きにくいから、運動靴をずっと履いていた。


だが、会社勤めとなると話は別だ。かっちりスーツを着て営業に行くのなら、運動靴はダメ。革靴で出退勤しなくちゃいけなかった。しかも勤務中もずっと履いていないといけない。


もうわかるだろう。足が激烈に臭くなったんだ。というのも、革靴は通気性がうんこだったからだ。足が蒸れるのなんの。臭い臭いと思っていた親父の足より臭くなった時は、絶望した。


そもそも足の臭いは、微生物によるものだ。革靴はその性質上、「蒸れる」「熱い」と楽園のような環境である。そりゃ増殖して増えるってもんだ。


足ってね、本当に臭くなったら机の下から漂ってくるもんだんだよ……?


ある日、自分の机の下から悪臭が漂ってきた時は、「もうダメだこれ」と覚悟を決めた。


ただ、世の中は上手くできている。臭う神あれば救う神あり。「デオナチュレ」なる神のアイテムがあったのだ!


「これで明日から臭くなくなるぞぉ~!」


と、Amazonでポチって上機嫌で足に塗りたくなった俺を待っていたのは、激烈な臭さだった。何の解決にもならなかったのである。1ミリたりとも改善されていなかった。


だが、ここで諦めては臭い足を付き合っていかなければいけない。なんか良い方法はないのかと考えた挙げ句、最高の解決方法を見つけた。


五本指ソックスである。そう、指ごとに先端がわかれているあれだ。くそ履きにくそうな、あれだ。


なぜ五本指ソックスが有効なのかと言うと、先ほどの解説を思い出して欲しい。足の臭いの原因は、「蒸れる」「熱」による微生物の発生だと言った。つまり、両方を抑制すれば、自然と臭わなくなるはずなのである。


では、五本指ソックスを思い浮かべてみよう。普通の靴下と違う部分は一つ。指が一本一本分かれているだけだ。これが大きい。なにせ、指の間に通気性が保たれているからだ。


五本指ソックスにすることで、ノーマルな靴下と違い、足の間に汗が溜まらなくなる。結果、臭いの原因を少し防げるのだ。


だが、これではまだ足りない。そう、繁殖する環境を撲滅しなければならない。じゃないと俺は、毎日机に座って「くっせぇですわぁぁぁっ!」と叫び続けなければいけないからだ。


そこで採用したのが、当時アホみたいに使われていたクロックス――のパチモン。我らがダイソーで買ったスリッパだった。


これがもう大正解。通気性が抜群だから、職場で履き替えるようにしたら、臭いが一瞬で消えたのである。それまで「くっせぇですわぁぁぁっ!」と顔をしかめていた自分からおさらばできたのだ!


足の臭いがなくなった俺は無敵だった。周りの男性陣がくっせぇ臭いを解き放っている中、ひとり快適に過ごしていたのだから。隣に座っていた上司からパワハラを受けていたこと以外は、実に過ごしやすかった。


ということで、これから新卒社員としてスーツを着て働く人たち。もしくは社会人として働きながら自分の足に「くっせぇですわぁぁぁっ!」と嘆いている人は、以下の方法をお試しあれ。


・五本指ソックスに変える

・職場の中は通気性の良い履き物に変える


注意点として、履き物を変えた時はTPOをわきまえよう。会議には革靴で出席した方が、怒られずにすむぞ!


足の臭いは、社会人になったら結構な人が直面する悩みだ。この話が、少しでも参考になれば幸いである。


なお、僕のオススメは無印の「90°足なり直角靴下」。通常タイプの靴下でも快適さが全く違うから、ぜひ一度体験してみて欲しい。

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たまには日常を語ってもいいじゃない 阿佐木 れい @asakirei

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