24.全国リトル野球大会西東京都地区予選の始まり
いよい全国リトル野球大会西東京都地区予選が始まった。俺達仙道リトルは去年の上位チームということもあり、シードで大会をスタートした。
「俺達の初戦は緑川リトルか・・・」
俺達仙道リトルは勝った方が俺達の対戦相手となる試合を観戦していた。そして4-6で緑川リトルが初戦を突破した。
「何? 緊張しているの? 大丈夫だよ! この程度敵じゃないさ!」
俺の隣に座っている永野先輩が自信満々にそう答えた。永野先輩は対戦相手の確認が取れたので、先に観客席から立ち上がって帰ろうとした。その背中には1番の背番号があった。西東京都地区予選が始まる数日前に仙道リトルの選手の背番号とスタメンが発表された。
1番 センター
2番 レフト
3番 ファースト
4番 キャッチャー
5番 ショート
6番 サード
7番 セカンド
8番 ライト
9番 ピッチャー
ちなみに俺は背番号15で控えのピッチャー、高史は背番号17で野手全般の控え、莉子は背番号20だった。俺達仙道リトルの所属メンバーは大会規定登録人数と同じで20人。全員一眼となって全国大会出場を目指していた。
「司、この後投球練習するか?」
「そうだな。来週の2回戦に向けて準備するよ」
俺達仙道リトルの面々はすぐに練習グラウンドに戻り、練習を始めて2回戦の準備をした。
■■
大会初戦の日程が終わり、2回戦に突入する期間となった。あっという間に俺達仙道リトルの試合の番となった。俺達は予選の2回戦、緑山リトルとぶつかった。緑山リトルは去年一回戦負けをしたらしい。しかし、何があるかわからないのが野球である。俺達は決して油断すること無く、相手を迎えた。結果として俺達は11-0という大差をつけて、4回コールド勝ちをして3回戦へと進んだ。永野先輩の投球数も50球ほどだったので、もう一度予選で投げられるのは良かった。
「くそー! あとあの1安打がなければノーヒットノーランだったのに!」
緑山リトル戦での永野先輩は無双だった。最速105キロのストレートを武器にして縦に鋭く変化する縦スラを使いこなしている。コントロールも良く、エースとしてふさわしいピッチングをしていた。
「仕方ないですよ。あれは運が悪かっただけです」
試合後に俺は永野先輩と今日の試合についてロッカーで話していた。永野先輩は2回の裏、ストレートをボテンヒットにされた。あれはベンチから見ているとたまたま当たったように見えた不運なヒットだった。しかしそれでノーヒットという記録を逃した。
「それに今日はコールドだったので、出来ても参考記録ですよ」
「それもそうか!」
基本的にリトルのピッチャーのノーヒットノーランは6回を投げ抜かないと記録にならない。しかし球数制限や66球ルールなどがあり、それを達成するものはいなかった。
「野神も早く投げたいだろ!」
「・・・はい」
俺は投げたかった。しかし監督から今日の登板は無いことを事前に伝えられていた。そのため、俺はベンチでウズウズとしていた。
「やっぱり野神はピッチャーだね! 野神はこんなところで投げるより、強敵に投げたいでしょ?」
「そうですね。うぬぼれかと思われるかもしれませんが、自分の投球がどこまで通じるのか試してみたいですね」
「そうか! そうか! やっぱり俺達は似ているな!」
何が似ているのか分からなかったが、俺の言っていることは本音だった。野球チートという特典をもらって転生して、そのチートがどこまで通用するか試したかった。ただ無双したいとかいうことではなく、滝上先輩のような怪物と同じステージに立って戦えることが嬉しかった。
「この後はどうするんだ、野神。練習するのか?」
「そうですね、でも大会中なので軽めにするつもりです。次の3回戦は5日後なので」
全国予選は7月中までにすべて終わるような日程になっている。そのため、勝ち進むに連れて試合の日にちが狭くなる。そのため、ピッチャーのやりくりにはどのチームも苦戦しており、大会中のピッチャーは過度の投げ込みを禁止されていた。
「そうか。俺は疲れたから帰るわ!」
球場の外で監督から日程の話をした後、永野先輩は宣言通りに家に帰っていった。俺は高史を誘って、いつもの公園で軽いキャッチボールを行った。莉子も参加して久々に三人でキャッチボールをした。
「次の相手は石山リトルか。どんなチームか知っているか、高史?」
「そうだな。そこまで不安になるチームではないな。去年も2回戦まで進んで負けたチームだから、俺達の実力をしっかり出せれば問題なく勝てると思うぞ!」
「ねぇ司。次の試合って投げる予定あるの?」
「いや、俺は監督からは言われていないよ、莉子。多分、宮本先輩が先発すると思うよ」
実際、さっき日程を話し終わった後に宮本先輩が監督に呼ばれていた。まぁ、高史の話を聞く限り、宮本先輩であれば余裕で勝てると俺も踏んでいた。しかし、油断はしないようにした。
「司! そろそろやめて、帰るぞ!」
俺達三人は疲れを残さないように早めに切り上げて帰宅をした。
■■
5日後、仙道リトルの3回戦が始まった。仙道リトルの先発は6年生の宮本だった。宮本は初回に2者連続フォワボールを出してピンチを迎えたが、その後はバックに助けられて無失点で切り抜けた。仙道リトルのバッターはこの試合も無双した。1番2番がヒットで出塁すると3番がフォワボールで満塁となり、4番の滝上が満塁ホームランを放った。それをきっかけに初回で一挙7得点を上げた。援護をもらった宮本はその後のピッチングは安定して行うことができ、2安打完投勝利をした。なお打線も爆発し、0-14の4回コールドになった。仙道リトルは準々決勝まで進んだ。
■■
「明日の先発を発表する! 明日は野神が先発だ! 野神、しっかり準備しておくように!」
「はい!」
5日後の準々決勝で俺は先発することが決まった。俺は今からワクワクをしていた。初めての公式戦、どんなバッターと戦えるのか楽しみであった。
「司、次の試合は荒崎リトルだ。今回と前回の相手よりもレベルは高いぞ」
「分かっているよ、高史。だからこそ嬉しいんじゃないか! 俺の球がどこまで通じるか、楽しみだからな!」
俺と高史は仙道リトルの練習グラウンドでキャッチボールをしていた。もちろん監督からは許可をもらっている。
「高史、座ってくれ」
「はぁ、5球だけだぞ!」
俺は肩が温まったので、5球ほど全力で投げた。球はもちろん、高史のグローブに吸い込まれるようだった。
(5日後か、本当に楽しみだな!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます