第3話 海の見える公園で


真理亜がまだ劇薬の効果が抜けないのか渋る様子を見ながら、玲子は悩んだ。


…どうしよう、このまま帰すと大変よね。


そこで、喫茶店の外を見ると、悠人と直矢が仲良く歩いていて、こちらに気づき、直矢が真理亜に手を振った。


「…!ごめん玲子、私帰るね!」


「えっ!?ちょっと真理亜!待って!」


制止を振り切り走って行ってしまった真理亜を、お金を払ってから追いかけた。

それは悠人と直矢も同じだった様子で、途中で二人と合流すると、三人で真理亜を追いかけた。


「真理亜は一体どうしたんだろう!?何か知らないかい玲子さん!?」


「いや、それがその…。」


直矢に事情を話せない玲子に、悠人が代わりに直矢に答えた。


「もしかしたらマリッジブルーなんじゃないか?気の迷いは誰にでもあるさ」


…ナイスフォロー!流石悠人!


玲子はそう思いながら直矢が見てないのを確認して悠人に手を合わせた。


「マリッジブルー?真理亜が…。」


信じられないといった様子で、直矢は走っていた。

事情を知っている悠人は、直矢の背を摩りながら言った。


「まぁまぁ、誰だって結婚前はちょっと不安になるものだよ、深く考えない考えない」


「俺の愛が足りなかったなかな…?」


不安そうに直矢がそう言うと、玲子が慌てて言った。


「そんな事ないわ!現に今日前祝いしてあげる

と、最初は真理亜幸せそうだったし!」


「…そうですか…俺がしっかりしないとですよね…!」


そう言うと、直矢は走るスピードを上げ、真理亜が海の見える公園で止まると、その手を掴んだ。


「離して!もう私嫌なの…貴方とはもう一緒に居られない!」


「どうして!?気に入らないことがあるなら言ってくれよ!出来るだけの事はするから!」


「もういいの!直矢君モテるし、私なんかよりもっと素敵な人とが絶対いいって…!」


「真理亜!君の居ない人生なんて考えられない!俺じゃダメか!?」


「…いや、ダメとかそんなんじゃなくて…。」


直矢は口ごもる真理亜を優しく抱きしめて、言った。


「真理亜、君じゃなきゃダメなんだ。何も言わずに俺について来てくれ」


「直矢君…。」


遠目でその様子を見ていた玲子と悠人は、ため息を吐きながら言った。


「別れさせるどころか、見せつけられちゃった」


「まぁしょうがないさ、薬なんて一時的なものだし…まだまだ俺の薬もデータが必要って事だな」


「…ちょっと待って、貴方が作った薬だったのあれ!?」


驚愕する玲子を見ながら、悠人は頷いた。


「まだまだ改良が必要だな。今回の結果はなかなか興味深かったよ。どうした玲子?」


「私は実験に付き合わされたわけ?何よそれ!あの二人に暴露してあげましょうか!?」


「おいおい!?冗談だよ!怒るなって…。」


苦笑いをしながら玲子の機嫌をとる悠人に、玲子は頬を膨らませながらそっぽを向いた。


…まぁ、お前を諦めさせるために薬を使わせたんだけどな。


そう思いながら、悠人は玲子を見つめた。


「何よ、何か私の顔についてる?」


「いや、何でもないよ玲子…。」


真理亜と直矢はアツアツだが、こっちの二人の春は、まだ先のようだった。




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劇薬マリッジブルー 雪兎 @yukito0219

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