お宝は密かな場所に
アオヤ
第1話
「ねぇお爺ちゃん? お爺ちゃんは物凄い財宝を持ってるの?」
昨日、私の親友の沙羅がどこから聞いたか分からないが噂話を私にしてきた。
その噂話は『私のお爺ちゃんが財宝を持ってる』というものだった。
その噂話のお爺ちゃんは私の方にシワシワの顔を向けるとニャッと笑った。
「財宝と呼べるかどうかは分からんがお宝はもってるぞ。家の中に金庫を隠しておる。もしその金庫を見つけられたらお前にそのお宝を譲ろう」
私はお爺ちゃんの話しに驚いてぽかんとした。
この狭い家に金庫とかお宝とか縁が無いと思っていたから……
そして私はお爺ちゃんにニャッと悪人の様な笑みを浮かべる。
こんな狭い家に金庫を隠す場所なんてかぎられているはずだ。
きっと簡単に見つけられる筈だ。
「この狭い家の中に金庫が隠してあるの? 金庫なんか一度も見た事ないよ。もし見つけたら絶対にお宝貰うからね」
きっと噂話は本当なんだ。
お爺ちゃんはカワイイ孫の私にその財宝を譲ってくれる。
なんて気前のいいお爺ちゃんなんだろう。
私はもうニヤけた顔が直らなかった。
さぁ〜、お爺ちゃんの気が変わらないうちにお宝を見つけないと……
私はお爺ちゃんがお宝を隠しそうな場所をいろいろ考えた。
私が読んだある本では家の間取りを観て、そこに住む人々の事を考察していた。
そしてそこから事件を解決していた。
我が家では事件なんてドコにも無いが…
でも『謎はすべて解けた』なんて決めゼリフを一度は言ってみたい。
私は紙に我が家の間取りを描いてお爺ちゃんが金庫を隠していそうな隙間を探した。
あの本の中では奥行きがオカシイ部屋があってそこが謎解きのヒントになっていた。
だか我が家の壁はコンコンと叩けば隣りの部屋まで響く薄い壁だった。
なんだか変なところで悲しくなった。
ムダな空間なんてドコにも無い。
まさか天井裏?
それとも床下収納になっているとか?
簡単に解決すると思ったのに私の頭では無理なんだろうか?
『そうだ、困ったときの神頼みだ』
私は仏壇にお線香をあげて先祖にすがろうとした。
でも……
こんな時に限ってお線香が無い!
私は仏壇の下にある戸を開けてゴソゴソした。
奥の方にお線香が見えてホッとしたが私は同時にある事に気がついた。
「謎はすべて解けた」
思わず言ってしまった。
この収納場所の奥行きが足りない。
この仏壇の奥には空間がある。
今まで散々探していた謎の空間がココにあったのだ。
私ははやる気持ちを抑えて、まず仏壇にお線香をあげた。
「神様ご先祖様、私にチカラを貸してくれてありがとうございます」
感謝の言葉を言い終えると私は仏壇の周りに扉が無いか探した。
「アッタ、仏壇の側面に扉が…… ヤッター!」
嬉しくて私の心臓の鼓動が高まった。
そして何とかその扉を開ける事ができた。
その中にはお爺ちゃんが言っていた金庫の扉が有って……
はやくお宝を拝みたくて私はお爺ちゃんの元に走って行った。
「何、もう見つけてしまったのか? 仕方無い、ワシのお宝をお前にやろう」
お爺ちゃんが金庫の扉を開けるのが待ち遠しかった。
お爺ちゃんが金庫の扉を開けるとソコには金ののべ棒や金貨が……ウン?
「何コレお爺ちゃん? 財宝はドコなの?」
金庫の中には年代物の雑誌が数冊入っていた。
「コレはな武田久美子という女優なんじゃ。この絶世の美女がホタテ貝のビキニを着けた写真集は希少価値があって…」
私はエロジジィの戯言を遮った。
「コレがお宝だと? ふざけるなエロジジィ! こんなモノ貰っても嬉しくなんか無い」
見事に期待を裏切られ、私はお爺ちゃんに酷い事を言ってしまった。
でも、私の事をこんなに期待させておいて、こんなゴミをお宝なんてひどすぎる。
お爺ちゃんがなんだか汚いモノに見えてきた。
でもこんなモノ家に置いて置くのもイヤだ。
そうだ、ネットオークションにでも出して売ってしまおう。
きっとモノ好きが居て千円位には成るのではないか?
雑誌をゴミ箱に叩き込みそうになったが慌てて停めた。
私はこの雑誌を一刻も早く手放したがった。
でも、ネットオークションの落札予定額はドンドン上がっていく。
最終落札額は38万円になってしまった。
いったい世の中にはどのくらいエロジジィがいるんだ?
エロジジィ……
やっぱりお爺ちゃんが金庫に仕舞っていたのはお宝だったのだろうか?
38万円を受け取って私の考えは少しずつ変わって行った。
でもその後、とんでもない事が発覚した。
なんとお爺ちゃんの金庫は二重底だったのだ。
雑誌は金庫の底の底に入っているモノから気を逸らすモノだった。
なんとその金庫の底の底には小判が40枚ほど入っていたのだ。
モチロン金庫の中身は私が……
現在、家族会議中だ。
お宝は密かな場所に アオヤ @aoyashou
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