第7話 リハーサル(結)
マ「そんなときは、僕に任さんかい(胸を叩く)」
シ「どないすんねん?」
マ「脱色すんねん」
シ「(走り出す)・・・(一周して)ああ、しんど」
マ「おい、おい。待たんかい。シタイ君。君、何やっトンねん?」
シ「いや。ダッシュ」
マ「違うがな。僕の言うてんのんは、ダッシュやのうて、脱色」
シ「ダッショク? なんや、ダッショクて?」
マ「脱色。ええか、『脱ぐ』の『脱』に『色』ちゅう漢字や」
シ「えっ、ほなら、『色』さんちゅう姉ちゃんが脱ぐんかい?」
マ「誰が脱ぐねん。ちゃうがな。脱色ちゅうたら、色を消すんや。シタイ君、血は何色や?」
シ「血? 血は赤やがな」
マ「そうや。その血の赤色が、さっと消える。これが脱色や」
シ「あの血の赤色が消えるかあ?」
マ「そや。簡単に消える方法があんねんや」
シ「えっ、そんなええ方法があるんかいな。どないすんねん?」
マ「オキシドールを使うんや」
シ「えっ、オキシドールちゅうたら、薬局で売ってる消毒液かいな?」
マ「そうや。オキシドールはな、過酸化水素ちゅう化学物質なんや。そんで、過酸化水素には酸化・還元反応を起こす作用があってな、これで、色を消してしまうんや。つまりや。君の服に赤い血がついててもな、その血の上からオキシドールを塗ったらええねん。そしたら、たちどころに血の赤色が消えて、透明になってしまうんや」
シ「そりゃ、便利やなあ。A子を氷で刺し殺した後、ボクの身体の血をオキシドールで脱色したら、誰もボクが殺したって分からへんわけや。だから、死体が発見される前に逃げたらええんや」
マ「どや、これで、完全犯罪の完成や」
シ「ちょっと、待ってや。ここで、整理してみるで」
マ「うん。どないなる?」
シ「まず、ボクはやな。ホテルの氷の彫刻を作る方法で、ゆっくりと水を凍らせて、硬い氷を作るんや。そんで、その氷の先を削って尖らせる。続いて、A子を会社の備品倉庫に『A子はん。好きです』ちゅうて呼び出す。そこで、氷でズブリ(マナブの胸に突き刺すふり)」
マ「(胸に手を当てて)うわ~。やられた~。てか、もうこれは、ええねん」
シ「それから、返り血はオキシドールで脱色して、ボクは知らん顔して、会社を出て逃げたらええんや」
マ「(パチパチと拍手)そうやがな。それで、完全犯罪の完成や。おめでとうさん!」
シ「そやけど、マナブ君。これ、ほんまに秘密にしてや。特に警察には言うたら、あかんで」
マ「心配しいな。殺人は秘密・・さつ人は秘密・・サツの人には秘密にするがな」
シ「君とは、やっとられんわ」
両「ほな、さいなら」
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