第5話 リハーサル(承3)

シ「そりゃ、やっぱり会社しかないわなあ。ボクはA子とは会社でしか顔あわせへんもんなあ」


マ「会社で殺人かいな。どないしてやるんや?」


シ「そやなあ。A子が机で仕事してるときに背中からズブリとやる」


マ「みんなが見てる前でかい? すぐに、捕まってしまうがな。会社でA子が一人になるときはないんかい?」


シ「会社でA子が一人になるんは・・・トイレに行くときぐらいやなあ。そうかあ、トイレに隠れてて、A子が入ったときに背中からズブリとやる」


マ「A子やから女子トイレやろ。シタイ君が女子トイレに隠れてたら、それだけで捕まるわ」


シ「ほんなら、女装して隠れたらどないや?」


マ「その顔で女装かいな。冗談は顔だけにしときや。シタイ君の女装やったら、すぐオッサンて分かるがな」


シ「あかんか。ほな、どないしたらええんやろ。そや、A子の家の前で待ち伏せして、A子が会社から帰ってきたところを背中からズブリとやる」


マ「君。A子の家、知っとんのんかいな?」


シ「いや、知らんわ」


マ「ほな、あかんやないか」


シ「やっぱり、会社でやるしかないか。会社でA子が一人になる場所か? ええ場所を思いつかへんなあ」


マ「ほんなら、殺人はあきらめるしかないで」


シ「そや。A子を会社の誰もおれへん備品倉庫に呼び出すちゅうのんはどうや。ズブリとやったあと、ボクが逃げたら、犯行時にA子と二人やったて、分からへんやろ」


マ「君、A子に何と言うて、その備品倉庫に呼び出すねん」


シ「(真面目な顔で)A子はん。話がおまんねん」


マ「あかん、あかん。そんな恐い顔で言うたら、誰も倉庫に行かへんわ」


シ「ほんなら、これはどうや。A子はん。わてはあんたが好きでんねん」


マ「君のその顔で言われてもなあ。うれしないわ」


シ「ほっといてんか。せやけど、好きや言われたらA子も来るやろ」


マ「そやなあ。ほんなら、君に好きや言われてA子が備品倉庫に来たとしょうか。それから、どないすんねん」


シ「宅配便で送ったツララをこう持ってやな。背中からズブリとやる」


マ「ツララは、ほんまに背中に突き刺さんのかいな?」


シ「えっ、どういうこっちゃ」


マ「A子は服を着てんねんやろ。ツララがその服を破って背中に突き刺さるんか?」


シ「ツララの先は尖ってるやないかい。尖ってなかったら、削って尖らせたらええんやろ」


マ「君。ツララちゅうんは氷やで。細くなってる先端は強度がなくて弱いわな。そこへ、先を削って尖らせたら、ますます強度が落ちるがな。そんなんやったら、刺すときに折れてしまうやろ。凶器は、突き刺しても折れへん硬い氷でないとあかんで」


シ「そうやなあ。そんなに硬いツララって、聞いたことないなあ。・・・こりゃ、ツララでは無理やなあ。硬い氷なあ・・・う~ん。どないして作ったらええねんやろ? マナブ君。なんかええ知恵はあらへんか?」 




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