第3話 リハーサル(承1)

シ「実はなあ。ボク、殺したい人がおんねん」


マ「人を殺したい? いきなり、物騒な話やなあ。一体、どないしたんや」


シ「ボクの女性上司やねんけどな。それがまた、あんた、きれいな姉ちゃんなんや」


マ「ははあ、その女性上司と浮気でもしたんかい」


シ「何で、浮気が出てくんねん」


マ「いや、その女性上司と浮気して、上司の亭主を殺したい・・・」


シ「ちがうがな。ボクが殺したいんが、その女性上司なんや。まあ、マナブ君、聞いてえや。その女性上司をA子とするとなあ、A子は・・・」


 ・・・


マ「それは、えらい悪いやっちゃなあ。そのA子は」


シ「そうやろ。マナブ君。ボクの気持ち分かってくれるやろ」


マ「で、そのA子をどないして殺すねん」


シ「ええ方法があんねん。完全犯罪や」


マ「完全犯罪? 君なあ、完全犯罪ちゅうもんは小説の中だけやで」


シ「いや。この方法やったら完全犯罪ができるねん」


マ「そうか?(疑いの眼でシタイの顔を見る) ほな、君の考えた完全犯罪ちゅうのを言うてみ」


シ「氷を使うねん」


マ「こ、氷?」


シ「そうや。尖らせた氷をA子の胸にぐさり(マナブに突き刺すふり)」


マ「(胸に手を当てて)うわ~。やられた~」


シ「そんで、後はほっとくだけや」


マ「ほっとくんかい。何にもせえへんのかい」


シ「マナブ君。胸に刺さった氷は、その後どないなると思う?」


マ「(胸を見て)そら、溶けるわなあ」


シ「そこや」


マ「(床を探す振り)えっ、どこや?」


シ「古いギャグ、しいなや。そんなギャグ、今どき、誰も笑わへんで」


マ「さよか。で、氷が溶けたら、どないなんねん」


シ「それや。氷が溶けたら凶器がなくなるがな。指紋も分かれへんがな」


マ「確かに、そやなあ。せやけど、なんや、安もんの推理小説みたいやなあ」


シ「どや、完璧な犯罪やろ。警察はボクが氷でA子を殺したと思ても、凶器がないから、ボクを捕まえられへんというわけや」


マ「しかし、シタイ君。ほな、その氷はどこで手に入れんねん?」


シ「えっ」


マ「氷やがな、氷。君、どこで氷を手に入れんねん?」


シ「そら、氷屋さんで買うがな」


マ「それは、あかんで。氷屋さんの防犯カメラにシタイ君が写ってしまうがな」


シ「ほな、覆面していったらどうや?」


マ「覆面して氷を買うんかい。よけい怪しいがな」


シ「それやったら、サングラスで変装や」


マ「あかん。あかん。いまの防犯カメラはなあ。サングラスを掛けてても、掛けてへんときの顔が分かるんや。それに、君みたいなおもろい顔は変装してもすぐ分かるがな」


シ「おもろい顔はよけいや。ほっといてんか。せやけどあかんか。ほな、氷を自分で作ったらどうや?」


マ「自分で作る? どないして作るねん?」

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