第60話 蛇骨会 ③

脛夫すねおsaid】


 黄薔薇派と黒薔薇派の会合が秘密裏に進められていた。彼らは今の蛇骨会を一掃し、力で支配する新しい秩序を築こうとしていた。ボクちゃんもその中で重要な役割を担うことになった。


「鷺田くん、D地区の不良たちとの接触はどうだった?」


 泥水進次郎先輩が尋ねた。僕は自信満々に答えた。


「先輩、彼らはボクちゃん達の手に落ちました。次の指示を待っています。」


 泥水先輩の顔には満足そうな表情が浮かんだ。


「素晴らしい。次のステップに進もう。まず、D地区を拠点にして、不良たちと協力して学園内にさらに影響力を拡大するんだ。力で支配するためには、手段を選ばないことだ。」


 僕ちゃん達は計画を着実に実行していった。

 学園の主要な地点を次々と制圧し、黄薔薇派と黒薔薇派の連携を強化していった。

 その間にも不良たちの協力を得て、勢力を拡大させていった。


 ある日、泥水進次郎先輩が僕に重要な任務を伝えた。


「鷺田くん、次は青薔薇派のリーダー・佐渡屋薫さどや かおるを取り込むんだ。彼女は武術の達人として有名で、かなりの影響力を持っている。彼女が仲間になれば、学園全体への支配が一歩近づく。」


 ボクちゃんは緊張しながらも、その任務を引き受けた。

 佐渡屋薫との接触は容易ではなかったが、彼女を説得するための作戦を練っていった。


 ◇


 ある日、学園の庭で佐渡屋薫と接触する機会が訪れた。彼女は樹の下で静かに瞑想していた。


「佐渡屋さん、お話があります 」


 ボクちゃんは慎重に言葉を選びながら、彼女に近づいた。冬木は目を開けずに静かに答えた。


「何の用よ、坊や?」


「ボクちゃんは黄薔薇のメンバーです。

 学園の改革を進めるために、あなたの力を貸していただきたいのです。

 力こそ正義。あなたもその力を持つ一人として、ボクちゃん達と共に学園を支配しましょう」



 佐渡屋薫はゆっくりと目を開け、鋭い目つきでボクちゃんを見た。


「……気にいらないわね。 寝言は寝ている時に言いなさいな、坊や」


 クッ、やはり一筋縄ではいかないか……

 ボクちゃんは相棒の舞台豪利羅ぶた ごりらをけしかけることにした。

 この脳筋は考えることが苦手だから、頭脳担当のボクちゃんの言うことを聞くように、泥水先輩から命令されている。

 だから、荒事は舞台豪利羅ぶた ごりらこと、ブタゴリラに任せることにしている。

 おかげで、D地区の不良どもも、ボクちゃんの子分みたいに成っている。

 このまま、ボクちゃんの勢力が力をつければ、泥水先輩や蟋蟀太郎さんをごぼう抜きして黄薔薇派のリーダーの座だって夢じゃないはずだ !


 だからこそ、彼女、佐渡屋薫を屈服させて味方に付ければ、ボクちゃんの地位が上がるハズ !

 ついでに、佐渡屋薫をボクちゃんの女にしてしまえば、伸美太や茨城を一気に越えてしまうはずだ。

 そうしたら、伸美太や茨城の女達だって、力ずくで奪うことだって出来るはずだ !


 伸美太の目の前で、アイツの彼女である青山詩乃あおやま しの瑠璃小路夕姫るりこうじ ゆうき凌辱りょうじょくしてやるんだ !

 そして、次は茨城の……


「妄想しているところ悪いけど終わったわよ、坊や 」


 よだれを拭きつつ振り返るとムチを持った佐渡屋薫の後ろには、気絶したブタゴリラとD地区の不良が横たわっていた。


「それで坊やは、どうするんだい ? 」


 佐渡屋薫が冷たい視線を向ける中、ボクちゃんは逃げ出した !


 ボクちゃんは全速力で駆け出した。心臓が破裂しそうな勢いで鼓動し、汗が額から滝のように流れ落ちた。ボクちゃん何とかして逃げ切らなければならなかった。


 背後で佐渡屋薫の冷徹な視線が消えることはなかった。ボクちゃんは自分の優位を取り戻すためにどうすればよいのか、頭をフル回転させたが、今はただ逃避がボクちゃんの唯一の選択肢だった。


 学園の外れにたどり着くと、ボクちゃんは一瞬立ち止まり、息を整えた。ここで冷静に次の一手を考えなければならない。泥水先輩に報告する手段を探し、同時に敵を攻略する新たな作戦を計画しなければならなかった。


「くそっ…ボクちゃんの計画を台無しにしやがって !」


 ボクちゃんは拳を固く握りしめ、決意を新たにした。

 こう成ったら、シャイアン 粕谷剛(かすや たけし)だましてボクちゃんの手駒にして佐渡屋薫青薔薇にぶつけるしかない !


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