第59話 蛇骨会 ②

脛夫すねおsaid】


 せっかく、正式会員に成ったのに……蛇骨会は応援団や格闘技系運動部で構成された有志連合。

 不良の総元締めかと思っていたのに、単に有志による自警組織と言う立場だった。


 ◇◇◇


 蛇骨会には、以下の目的やルールがある。


 ①力をもって力を制す 学園内の不良をボコって黙らせる。


 ②平和になったら解散する 力による統制がなされ、学園内が平定されたら解散すること。


 ③Dangerous危険地区こと、D地区に逃げ込んだ不良は放置 不良にも居場所を与えることで追い込んでの暴走を抑止するため。


 ④これにより後にD地区は不良の溜まり場となり、学園内の無法地帯となる。

 活動時、一般会員は仮面の着用の義務、不良の報復を防ぐために着用すること。



 ◇◇◇


 なんだよ、なんだよ ! これじゃあ、風紀委員会と変わらないじゃないか !


 せっかく苦労して、蛇骨会の正式会員に成ったのに、伸美太や茨城どころか、シャイアン粕屋剛にだってマウント取れると思っていたのに !


「どうしたんだい。 何か不満があるのかな ?」


 泥水進次郎先輩が聞いてきた。

 さすがに正直に話す訳にもいかずに口籠くちごもっていたら、何時もはさわやかな笑顔の泥水先輩がニチャァと歪んだ顔で笑っていた。


「鷺田くん。 やはり君は、私が見込んだ男だったようだね。

 私達、黄薔薇派と黒薔薇派は、今の蛇骨会を変える目的があるんだ !

 赤、白、青薔薇派は従来の風紀委員会の真似事を従っているけどね。

 力こそ正義なんだから、私達が学園を支配した方が良いに決まっているだろう。

 鷺田くん、一緒に学園を支配する側に回らないかい ?」


 ボクちゃんは、一も二もなく首を縦に振っていた。


「もちろんです、先輩!」


 泥水進次郎先輩は満足げにうなずき、しばらくの間、鋭い目つきで僕を見つめた。

 その視線に少しばかり恐怖を覚えたが、それ以上に学園を支配するという甘美な誘惑に心を躍らせていた。


「よし、それじゃあ正式に君を黄薔薇派に迎え入れよう。まずは会合に参加してもらう。」


 泥水進次郎先輩の指示に従い、僕は黄薔薇派の秘密の場所へと連れられた。

 そこは学園の旧棟の地下にある薄暗い部屋で、黄色の薔薇の紋章が壁に描かれていた。

 部屋の中心には、既に数名の黄薔薇派のメンバーが集まっていた。


「では、鷺田くんを正式な黄薔薇派の一員として迎え入れる。皆、彼を歓迎してくれ。」


 そこに集まっていたメンバーたちが一斉に拍手をしながら僕を迎え入れてくれた。

 その中には見覚えのある顔もいくつかあり、自分が彼らの一員として認められたことに誇りを感じた。


「鷺田くん、今後は君がこの学園を力で支配するための重要な駒となる。まずはD地区に入り込み、反抗的な者たちを押さえつけるんだ。そして、その過程で他のメンバーたちと協力し、私達の力を見せつけていこう。」


 泥水先輩の言葉にボクちゃんは力強くうなずいた。

 力こそ全て ! この学園での裏からの支配を築くために、ボクちゃんは黄薔薇派の一員として全力を尽くす覚悟を決めた。


 ◇


 次の日から、ボクちゃんは黄薔薇派としての活動を開始した。泥水先輩の指示のもと、D地区での見回りや、反抗する不良たちへの圧力、時には暴力をもっての制圧に乗り出した。

 初めは緊張していたが、相棒に成った舞台豪利羅ぶた ごりらが活躍したこともあり、次第にボクちゃんの力が認められるにつれて、自信がついていった。


 舞台豪利羅ぶた ごりらとも徐々に信頼を築き上げ、黄薔薇派の一員としての一体感も深まっていった。学園内での立場が日に強固になっていくのを実感しながら、ボクちゃんは次第に自分の運命を感じるようになっていった。


 しかし、同時に学園内には別の思惑を持つ者たちが存在することも感じ始めていた。赤薔薇派、白薔薇派、青薔薇派…それぞれの派閥が自分たちの理念を持って動いている。その中で、どのように黄薔薇派が支配力を拡大していくのか、それが今後の課題だった。


「これからだ……」


 ボクちゃんは自分に言い聞かせ、新たな一歩を踏み出した。学園を支配し、いずれは、ボクちゃんの支配する学園を築き上げるために、これからも全力で突き進んでいく覚悟を胸に秘めて !


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