第57話 栃木兄弟の逆襲 ?

栃木孝司とちぎ こうじsaid】


「ふっ……」

「ふっ 、?」


「不幸だぁぁぁぁ !

 世の中、理不尽なんだっぺ !」


 雄仁が突然に叫んだんだっぺ……

 まったく、このでれすけめ※1が ! な~に、ごじゃっぺ※2言ってんだ ?


 クラスの綺麗どころを独占している茨城恭介、許すまじ !

 そんなオラ達をクラスの女子生徒が冷たい目で見ている。

 まったく、仕方ないべ……茨城恭介の幼馴染み達、皆が美少女な上に福岡姫子ふくおか ひめこ九頭龍珠緒くずりゅう たまお牛込カスミウッシーまでもが、茨城恭介とデートしたとあってはオラ達に彼女なんかと、投げやりに成るのもしょうがないんだっぺ。


「そんなんだから、アンタラはモテないのよ、栃木兄弟 ! 」


詩乃しのちゃん、詩乃ちゃん、本当のことだけど、ちょっとだけ可哀想だよ……」


「甘いわよ、夕姫ゆうき ! コイツらみたいな奴に優しくすると勘違いして、自分が夕姫に惚れられていると信じてしまうわよ ! 」


「えっ~~、それは困るよ !

 ボクは伸美太一筋なんだからね 」


 能美伸美太のうみ のびたと付き合っている青山詩乃あおやま しの瑠璃小路夕姫るりこうじ ゆうきが、オラ達にイチャモンをつけてきたんだっぺ。


 詩乃と夕姫に囲まれて、一瞬静まり返った教室。

 しかしその静けさは長くは続かない。雄仁の顔が次第に赤くなり、再び叫び声をあげた。


「ほんとに不幸なオラ達なんだっぺ!どうすればこの状況を変えられるんだ?」


 詩乃はため息混じりにうなずいた。


「とにかく、もっとちゃんとした男になることよ、茨城や伸美太みたいに女の子に優しくないとモテないわよ」


「オラ達だって、十分に優しいっぺ !」


「いやいや、アンタラは下心が丸見えなのよ 」


 周りを見ると、女子生徒だけでなく男子生徒までがうなずいていた。


「……そんなことないっぺ」


 雄仁は弱々しく呟いたが、その言葉は教室全体に響き渡り、再び静けさが戻ってきた。


 しかし、詩乃は引き下がらなかった。


「じゃあ、その証拠を見せなさいよ!有言実行しないと、ただの口先だけの男どもって思われるわよ」


 雄仁とオラはお互いを見つめ、深く考え込んだ。どうすれば証明できるのか、どうすれば自分たちがただの「でれすけ」や「ごじゃっぺ」ではないと示せるのか。


 その時、教室のドアが開き、担任の潮来由利凛いたこ ゆりりん先生が入ってきた。


「こら、みんな席につくのじゃ。授業が始まるのじゃ !」


 みんなが席に戻り、教室の騒々しさが一時的に収まった。だが、オラと雄仁の心は依然として揺れていた。どうすればもっと魅力的な人間になれるのか、その問いがオラの頭の中を巡っていた。


 逆襲だ、茨城恭介に逆襲して、オラ達の方が魅力があることを証明するんだっぺ !



 放課後、オラ達は学校の校庭で集まり、次なる一手を練り始めた。 オラには一つの明確な目標があった。

 それは、茨城恭介に対抗し、クラスでの評価を一変させることだった。


「雄仁、まずは目立つことが重要だっぺ。何か大きなイベントを企画して、オラ達の魅力をみんなに見せるんだっぺ!」


「そうだな、孝司。でも、何がいいんだっぺ?」


 オラ達二人は思案に暮れたが、その時、幸いにも学校で次の週末に行われるときめき祭文化部祭りの話が耳に入ってきた。


「ときめき祭だっぺ!これだ、雄仁。我らの才能を存分に発揮するチャンスだっぺ!」



 オラ達は早速動き出した。ときめき祭で目立つために、オラ達は特別なステージイベントを計画することにした。

 それは「栃木兄弟のライブパフォーマンス」だった。

 モテない友人たちの協力を得て、舞台装置や演出方法を考え、何日もかけてリハーサルを重ねた。



 ── ときめき祭当日 ──


 そして、ついにときめき祭の幕が開いた。校庭には色とりどりの屋台が並び、生徒たちの笑顔が溢れていた。オラ達の出番が近づくにつれ、オラの心臓は高鳴っていた。


 ステージに立ったオラと雄仁は、堂々とマイクを握り、観客に向かって挨拶をした。


「みんな、こんにちはだっぺ!今日はオラたちのパフォーマンスを見てくれたら嬉しいっぺ!」


 雄仁が力強く叫んだ。



 ライブパフォーマンスが始まると、オラ達の元気でエネルギッシュな漫才が広がり、観客は次第に引き込まれた。雄仁のボケとオラ孝司の突っ込みが見事に調和し、ステージ上で輝きを放っていたと思うんだっぺ。


 オラ達の漫才が終わると、観客から大きな拍手が巻き起こった。普段は冷やかだったクラスメイトたちも、オラ達のパフォーマンスに感動し、好意的な眼差しを送っていたっぺ。


「栃木兄弟、面白かったぞぉー !」

「ウチの学園から、M―1優勝者が出るかも !」


 など、観客席から聞こえてきたんだっぺ。

 将来のことなんて考えてなかったけど、お笑い芸人も悪くないんだっぺ。

 お笑い芸人はモテモテらしいから、オラ達も美人芸能人や美人キャスターとの結婚も夢ではないんだっぺ !



 ◇◇◇


 ※1 「だらしない奴」「いい加減な奴」 今風に言えば、「しょーもない奴」


 ※2「ごじゃっぺ」は「いい加減」という意味で茨城県を中心に北関東で使われています。







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