第43話 真実は小説より奇なり、と云うけど底辺小説の中だった件

【冬香side】


 ユリリンこと潮来由利凛先生の言う通りなら、やっぱりド底辺小説の世界だと確信したと同時に安心もしている。

 あのド底辺作者はヘタレだから、悲惨な物語には成らないだろう。

 映画にまで成った某小説のように殺し合いなんてゴメンだからね。

 だけど、心配でもある……

 新撰組なんて出してくるあたり、時代ファンタジーにでも影響されたのだろうか ?

 まあ、超能力だのロボットだの出さなかっただけマシかと思ったが……出さないよね。


 あのド底辺作者は、結構ヒネクレているから心配だ。


「冬香、まだ何か有るのかい ? 」

「いいえ、大丈夫です、兄さん 」


 兄さん恭介が心配そうに私を見ている。

 残念ながら、兄さんはド底辺作者の小説を読んだことが無い。

 だから、私がしっかりしないと !



 ◇◇◇


「待っていたわ。 茨城兄妹 」

 鞄を取りに教室に向かう途中で声をかけられた。

 今川生徒会 副会長吉良大和きら やまと先輩が居た。


「事情は潮来先生……ユリリンから聞いているわ。

 細かいことは生徒会室で聞くから来てくれるかしら ?」


 吉良先輩の後を追いて行くのだけど、さっき先輩はと呼び捨てにしていた。

 ものすごく嫌な予感がするのだけど、気のせいよね……


 生徒会室に入ると既に生徒会メンバーが待っていた。

 生徒会長の今川徳子先輩、生徒会書記の柳沢弥太郎先輩、吉良副会長の私兵である柳生嵐子先輩が、私達を見ていた。


「すまないわね、が巻き込んでしまったことはお詫びするわ 」


「ヒドイわ、 ! せっかくしてからも出逢えた親友だというのに !



「奇縁と云うべきか、拙者は左近殿にまた仕えることが出来たのは光栄でござる !」


「…………私、呪われているのだろうか ?」


 今川先輩、吉良先輩、柳生先輩、柳沢先輩が漫才をしているように見えるけど、もしかして……


「 流石に気づくわよね。 ご想像の通り、私達も転生者よ。

 私の前世は、吉良きら上野介こうずのすけ義央よしひさ

 言わずと知れた『赤穂浪士』の悪役よ ! 」


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