第37話 春休み ③

【舞side】


 春休みなのは良いのだけど、恭介に会う為には理由が必要になるのがわずらわしい。

 夏休みや冬休みと違って春休みには宿題が無い !

 このことだけで考えれば最高なんだけど、恭介に会う口実が無くなるのが口惜しい。

 ふと何の気なしに恭介の家の方を見ると、恭介と春香さん、冬香、さくらが茨城邸から出て来たのを見てしまった。

 ……さくらめ、何時も何時も抜け駆けしやがって !

 あのチビッ子は子供……幼稚園の頃から恭介にベッタリだ。

 愛ちゃんも美衣も出かけている、これはチャンスよね !

 何処かに出かけるようだけど……一緒に便乗するのは難しいかな…………そうだ !

 恭介や春香さんに相談があるフリをして、みんなに追いて行こう !



 ◇◇◇


 合流に成功。 やったね、舞 !


「それで、舞ちゃんの悩みって何かしら ?」


 春香さんが聞いてきたけど、相談内容を考えるのを忘れていた !

 私がウンウン悩んでいるのを見て、


「解った、進路のことかしら ?

 実は私も悩んでいたのよ。

『良い大学に行って良い会社に勤めれば良いかな』と考えていたら、親友の真由紀が真剣に看護師を目指しているのを聞いて、私も悩んでいたから解るわ 」


 どうやら、春香さんは勘違いしたようだけど、ここは利用させてもらいましょう。


「ええと、大学を出た後はお父さんが就職先を用意すると言うんですけど、そういうのはズルい気がするので気が進まないんです。

 でも、どういう仕事が自分に合っているか分からないから、とかとか!……みたいな言葉の職場には惹かれますね。

 そんな会社の中からに就職して、後は頑張ってみようかな、なんて、…… 」


 と、最後まで言い終わる前に恭介と冬香か、つかつかと近づいて来て、


「「ダメだぁよぉー !

 そんな、キャッチフレーズにに騙されている ! 」」


「「それは地獄への直行便だよ、舞ちゃん ! 」」


 冬香と恭介が叫んだ後、


「『どんな人でも大歓迎』は、キツすぎて辞める人が多すぎるって意味 ! 」


「『アットホームな職場』は経営者一族が会社を独裁しているからだし……」


「『熱意が評価される環境』はノルマや残業が酷いってことよ ! 」


 二人の剣幕に私達は圧倒されていた。


 おかげで、二人に注意されながら目的地に向かうはめに成ってしまった。

『 ブラック企業がどうとか 』と言っていたけど、二人で変なドラマでも見たのだろうか ?


 ◇◇◇


 サトウヨーカドーで恭介と冬香の学生服を受け取り、帰りは他愛もない話をしながら家に向かうと般若のような雰囲気の愛ちゃんと愉快そうにしている美衣が待っていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る