第34話 卒業 ③

【埼玉舞side】


 卒業式、それは別れの儀式と言うけれど、私達の学園は大学まであるので、ほとんどの生徒は内部進学するから関係無い。

 せいぜいが、クラス替えがある程度なんだけど……

 一大イベントだからこそ、愛の告白をする日でもある。

 ご丁寧なことに、厨二病をわずらわせた学園理事長が用意した、伝説の樹、伝説の鐘、伝説の坂、伝説のお寺、伝説の灯台、伝説の銅像……少々どころか、かなりやり過ぎだと思う。

 しかし、生徒には意外と好評で、今も彼方此方あちこちで告白合戦が始まっていた。


「え~と、君たち、事前に生徒会に予約申請した ? 」


 おそらくは、告白に来たカップルが風紀委員会機動新撰組の藤堂宜虎とうどう よしこ先輩から質問されていた。


 たぶん、伝説のシリーズで告白するのに、事前に申請するなんて知らなかったのでしょうね。


「えっー ! そんな、知らなかったですぅ~ 」


 既に、予約で一杯らしく何処の伝説物件は使え無いことが告げられた。

 カワイコぶりっ子している女子、火和優依かわ ゆいが愛想を振り撒いているけど、機動新撰組八番隊組長である藤堂先輩に通じる訳も無く……


 五、六人の男子生徒を引き連れた火和優依は項垂うなだれていた。

 ほっとけば良いのに、お人好しの藤堂先輩が、


「一応、伝説の理事長銅像は、空いているけど……どうする ?」


「じょっ、冗談じゃないわ !

 あのの前で結ばれた二人は絶対に別れるとか、不幸に成ると言われているのよ !」


 ……それは初耳だった。 心の中のメモ帳にメモしておこう。

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