第18話 茨城恭介 ③

【粕谷剛side】


 茨城恭介


 どことなく伸美太に似た雰囲気の茨城に相談に乗ってもらったことがある。

 とくに親しい仲ではなかったけど、プライドが邪魔をして、脛夫や英才になど相談出来なかったし、ましてや親になど相談出来ずに悩んでいた。


 茨城は嫌がりもせずに、ただただ黙って聞いてくれた。


「……あの日のことを後悔している。

 昔は、たんなる遊びとか、そういうので済むもんだと思っていた……だが」


 俺はゆっくりと話す。


 あの騒動から一年と少しの時が過ぎた時、俺の家族に異変が起こったのだ。

 まず、俺の家で飼っていた犬、ポチが公園に撒かれていた、毒団子を食べて死んでしまったこと。


 そして、俺の大好きだった“おじさん”が事故で命を落としてしまったのだ。


 俺にとって憧れで目標の人の死にショックを受けて、死ぬ直前に言われた事で変わった。


 ── 立派な漢になれ ──


 それから俺は乱暴者から変わっていったと思う。

 他人から物を奪わず、不用意に暴力を振るうことはしなかったつもりだ。


 そんな俺の心残り……伸美太の猫、ドラを殺してしまったこと。


 あの事件から伸美太と交流することがなくなった。


 


「おじさんやポチが亡くなってから俺は気づいたんだよ。大切なペット失った伸美太の気持ちってやつ……」


「………………」


「伸美太……俺のこと、許してくれるかな?」


 項垂うなだれている俺に茨城は、


「誠心誠意、今の気持ちを能美くんに言ってみたら ?

 思っているだけでは、相手に通じないよ。

 相手が許してくれるまで、許してくれた後も今の気持ちを忘れなければ、いつか 能美くんにも気持ちは伝わると思うよ 」


 茨城に励まされた俺は、伸美太の家に行き誠心誠意に謝った。


「少し前の僕なら、ずっと許さなかった」


「っ!」


「でも……」


 驚く俺へ伸美太は真っすぐに目を向けた。


「僕は前に進みたい。だから、君のことも許していきたいと思う、シャイアン」


 伸美太は俺へ手を伸ばす。


「もう一度、僕と友達になってよ」


「……おう、友よ」


 俺と伸美太はそういって握手を交わした。


 茨城も伸美太も俺より身体は小さいけど、なんてデカイやつなんだと尊敬してしまった。

 こんな身近に、おじさんの言う“立派な漢”が居たなんてな。


 本当は茨城とも友達に成りたかったが、脛夫のせいで…………いや、人のせいにしているようでは、立派な漢になんか成れないよな。

 俺のせいで、伸美太は静香ちゃんや英才ともギクシャクしているから、なんとかしないといけないよな。





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